第36章 *帰還まで
フィン「…」ぴとっ
ケイト「………」ぼー
フィン「……新婚旅行で楽しみに来た。それはわかるね?」
ケイト「…」こく
フィン「そして鍛練はいつでもできる。
今しなければいけないほどの急務かと言われればそうでもない。そこも?」
ケイト「ん」こく
フィン「なら何故」
ケイト「…渡り合える、人…欲しい…」
フィン「!」瞠目
ケイト「もう…オッタルとのあんな白熱した戦い…もう、できない。
とってもドキドキした…背水の陣で、とっても…限界の殻を感じて、それでもそれを…魔力で、突き破れて。
私は……あの感覚が、とっても好きに…なって…あんなドキドキで…渡り合えるの……
もう…できないのかなって…そう、思ったら……気付いたら…止まらなく、なってた。
早く追い付いて、欲しくて…早く、渡り合い、たくって……ただ…寂しかったんだ…耐えられ、なかった。
ごめん」
ああ…そうか……
あの時ほどの激闘は、あれっきりで終わりだった。
そして…ブランシェの時も、どちらも一方的に終わらせるというもの。
一時は完膚なきまでに負け、穢れた精霊となった後は完膚なきまでに勝利を収めた。
だからこそ、余計に思ったはずだ。
あれほどに白熱し合って全力でぶつかり合う熱い戦いは、もうない…
互いに拮抗し合い、譲れず、この身を燃やし尽くしてでも負けまいと暴れ、心身共に全てを出し尽くし、それでもなおも拮抗し合い、互いに果てた。
魔力が底をつきながらもオッタルを動けなくさせるよう倒した後、息絶え絶えになりながら彼を背負って迷宮を脱出し、回復させてから自力でふらふらになりながら夕暮れ時にようやく家に辿り着いた。←死闘と目覚め章、参照
それがもう、今ではない。
それを考えたからこそなのかもしれない。
今の戦いは、あまりにも生温いと…熱を感じられず耐え切れないという意味なのだろう。