第36章 *帰還まで
~不思議な体験(落ち着くまで)~
両親の墓前
そこで自慢の妻だとケイトの紹介をしてから…土下座をして感謝を伝えた後……
不思議と手の温もりが後ろ頭を優しく撫ぜた感覚が、僕をとらえて離さなかった。
最初に訪れたのは驚愕…目を見張り、瞠目したまま固まった。
嬉しそうに右横で笑うケイトを見やった後、再び両親の墓の方を見た。
でも…それ以上に……『頑張ったね』『よくやったぞ、ディムナ^^』
順に母と父からの声が脳裏にそう囁かれたのを皮切りに、涙腺が崩壊した。
感情の発露は止められず、そのまま涙となって零れ落ちていった。
憧れと羨望の目を向ける者がいた、余計なことをと煩わしさを抱く者もいた。
だが…恋を知って、その人から「私にとっても、フィンは初めての『光』だよ」(1225ページ参照)と言ってくれたことが何よりの救いとなった。それまでの全てが報われたとさえ思えた。
それに加えて…お父さんとお母さんが見てくれていた、報われた…
そんな想いが、それまでの想いが…怒涛のように押し寄せ、胸の内を荒らしていた。
フィン「っ…ぅっ」ぷるぷる
泣き震える、あの日のように叫びはしなくとも泣きじゃくり続ける中…
ケイトは右側からそっと包み込むように抱き締め、顔を覗き込みながら言ってくれた。
ケイト「フィン…ずっと、言いたかったことがある。
私を救ってくれて、私の初めての『光』になってくれて…本当に、ありがとう^^」
フィン「!…っぅ」ぎりっ
止めどなく零れ落ちていった涙は50分ほど止まることを知らず…ちょうど1時間が過ぎてからようやく落ち着いた。
その間…ケイトはずっと寄り添ってくれていて、抱き締めたまま頭を何度も何度も撫でてくれた。
時折、慰めるかのようにキスをされて…それが嬉しくて微笑んだけれど、それ以上に…
父母の頭を撫でる温もりは止むことが無く、それが余計に涙を止めること自体をとても難しくさせていた。
その真っ直ぐな、優しい彼女の心に惚れたのだと気付いて…
フィン「はっはっはっ^^//」
涙を流しながら、笑った。