第36章 *帰還まで
不思議な体験を味わってから1時間後、ようやく落ち着いた僕はケイトに尋ねた。
霊感があると、そういうことを感じるのか。
そして霊感を持つ者が傍に居れば感じることが出来るのか。
その答えは…正直、定かではないそうだ。
ただ…僕の両親が心配して、あの世から降りてきてくれたのかもしれないとのことだった。
「『いずれにせよ…たとえどう転んだとしても、それごと愛している』と伝えて欲しい」と言われたそうだ。
フィン「……俺も…愛しているよ……お父さん、お母さん」ぽつり
そう天を仰ぎながら、届くように祈りながらポツリと言葉を零した。
風に消えゆく言葉、あの日と同じぐらいに真っ赤な彩を見せる空。
あの時の彩は火が見せていたが、今日は夕焼けが彩っていた。
そして再び、優しく頬を撫でる感覚がした後…ふっと、そのままどこかへ消えていくのを感じた。
フィン「……いったかい?」真顔←天を仰いだまま
ケイト「…いったね。笑ってたよ」微笑←天を仰いだまま
フィン「霊感があると、こういう時は便利だね」くす←ケイトへ向き直る
ケイト「何言ってんの?
育ての家族にも母親にも姉にも会えてないよ、こっちは」むすっ
フィン「あー…
済まない;てっきり会えているものだとばかり;」
ケイト「ん…(頷)
大丈夫。あっちでも元気してるなら、それでいい。
ただ…いつでも会えるわけじゃないし、会える方が難しいから」
フィン「…ままならないものだね」
ケイト「何でもかんでもうまくいくわけなんてないじゃん。
そもそも、そんなんだったら生まれ変わってきた意味ないし」
フィン「ぷっ。確かに^^」くすくす
ケイト「まあ…だから……(手を後ろ頭で組む)
また会える時を、楽しみに待つことにするよ」
フィン「その日が早まるよう祈ってるよ」ぽんっ
ケイト「ん…ありがとう」
フィン「礼を言うのはこちらの方だ。いつもありがとう」微笑
ケイト「!//」
ちゅっ
再び、僕は両親の墓前でキスをした。
勿論、その後でやった回数分唇を奪われたのは言うまでもない。
命日(5月20日、誕生日)から一週間経っているわけだが
両親があの世から降りてきてくれたのは、それも関連している可能性は無きにしも非ずとのことだ。
こうして…33年ぶりの両親への墓参りは幕を下ろした――