第36章 *帰還まで
真っ赤になる彼女に対して、それを左手で頭を撫でて満面の笑みを浮かべながら言葉を続ける。
フィン「^^//
彼女とは…あなた方のお陰で出会えたと言っても過言じゃない。
そのお陰で僕は心から救われたし、毎日がとても楽しいとすら感じている。
時折、ふと思うんだ。
あなた方が、引き合わせたんじゃないか…とね」
微笑みかけながら言うと、風が吹いてきて僕達を優しく包み込んだ。
不思議なことに…両親が共に笑っているのを感じた。
そしてそれはケイトも同じようで、目を丸くしたまま凝視していた。
フィン「……まあ…何が言いたいかというと、やっぱり一言に尽きるね。
前置きが長くなったけれど、聞いて欲しい。
お父さん、お母さん、僕を産んでくれて、愛してくれて、育ててくれて…護ってくれてっ(ぽとっ)
何より、彼女と巡り会わせてくれて…(頭を下げる)
本当に、ありがとうございましたっっ!!」
土下座を敢行する中…止めどなく涙が溢れ出ては止まらなかった。
自分の意志では止められないほどに…それほどに…想いが溢れては止まらなかった。
ディムナとしてでもない、フィンとしてでもない…
ただ、一人の自分として…一人の男として、両親への想いをそっくりそのまま伝えた。
どうやら…僕もまた、ケイトに感化されているようだ。
真っ直ぐに伝えてくれるその姿勢が心地よかったが故か、気付けば…
気付いた時には、胸の内にある想いを誤魔化しなく伝えてしまっていた。
それがどれほど心地よく、嬉しいものか知っているからこそ…そうしてしまった。
フィン「…!!」
不意に、下げた頭に温もりを感じた。
隣にいるケイトかとも思ったが違う。
僕に倣ってか、「ありがとうございました!!」と同様に土下座をしている。
その後ろ頭に感じる温もりは『温かな手』で、ちょうど二人…父と母の右手だと、撫で方と動きですぐにわかった。
そしてケイトにも左手でされていて…心地いいのか、とても嬉しそうに微笑んでいた。
受け入れてもらったと感じたのかもしれない。
フィン「っ…ぅっ」
あの日のように涙が溢れ出る中…今度はケイトが右から抱き締めてきてくれた。
失ったからこそ…わかるものが、得られるものがある。
それを身を持って知った瞬間で、感情の発露が止められなかった。