第36章 *帰還まで
ケイト「だから…私は彼と一生を共にする道を選びました。
挨拶が遅くなって、報告が遅くなってすみません。
彼は…私が是が非でも護ります。
彼を守って死んだあなた方の代わりに、いえ…
あなた方の代わりにはなれませんが、彼を愛し続けます。
彼を産んでくれて、育ててくれて、護ってくれて、愛してくれて…
彼という存在を、私に引き合わせてくれて…本当に…ありがとうございます。
安からに眠って…安心して、笑って、見守ってて下さいっ;」ぼろぼろ
号泣と共に瞑目し合掌したまま土下座の如く頭を墓に下げる彼女に…
僕は堪え切れず、無理やり頭を上げさせて唇を奪った。
両親という立場、そこに決して代わりなどいない。
だが…だからこそ、得られたものがある。
失ったからこそ…こうして、妻という存在に救われた。
あの日…両親に庇われて『希望』を見出してから、絶望した。
何故逃げ出した同族と同じだと思い込んだ?何故嫌って唾棄した?
死ぬほど後悔した、今までの自分を呪った、涸れるまで泣き叫んだ…
あの時から、僕の中の時間は止まっていた。
この身の全ては小人族の復興の為だけにあると……
両親に報いる為に、両親に救われた命を捧げる気でいた。
あの時から…自分の求めるそれが小人族の復興だけとなり、それ以外は全て無いものとした。
そうでなければ…それまでの全てが無駄になると思っていた。
だが…違うのだと、彼女に出会ってからようやく気付けた。身を持って、与えられた。
彼女と出会ってから…その時間が動き、童心に帰ったかのように彼女との時間を楽しんだ。
ただ、傍に居るだけで楽しくて仕方が無かった。
心が弾んで、踊って…感情が湧き立っては止まらなかった。
ずっと…愛しくて堪らないという感情を得たこと等なかった。
両親の続きを、そこに垣間見た。
自分の幸せを求めてもいいのだと…彼女を見ていて、自然と思った。
馬鹿なことをと以前までの僕なら思っただろう。
だが…知ってしまった。自分などいない方がいいのだと言い、人の為に身を捧げて死に掛ける彼女を見て…気付いてしまった。
こうなることが、本当に望んだことなのか?両親はそれを望んでいるのか?と…
かと言って、小人族の復興を投げ出すわけにもいかない。
だが…この愛しさだけは、どうあっても無下にはできない。