第36章 *帰還まで
話が纏まったと共に、ケイトもまた落ち着きを取り戻したこともあって…
16:55に、ようやく両親の墓に挨拶ができた。
ケイト「合掌)えっと…初めまして。フィン…
いえ、ディムナを産んでくれてありがとうございます」深々お辞儀
フィン「いきなりそこからかい!?;」ぎょっ!;
驚きのあまり瞠目しながら目を向けると、彼女は極めて真剣な表情で墓と向かい合っていた。
ケイト「いつも世話になっております。
此度は妻となり、正式な挨拶が遅れたことをお詫び申し上げます(お辞儀)
不束者ですが、どうかよろしくお願い致します。見守っていて下さい。
私は彼を心から愛しています」
フィン「!//」
ケイト「生涯…この命を持って、共に生きることをここに誓います。
たとえどれほどの闇に飲まれようとも、病に蝕まれようと、障害に相まみえようとも…私は、彼と共に生きていきたい」
フィン「…っ」ぎりっ
不意に、その言葉に涙が滲み出てきた。
そういう愛を正面からぶつけてくれる存在が…有り難かった。
隣に、無償の愛を…距離が近いと感じることもあるけれど、それもまた街の環境故……
抱き着く時、必ず頬を寄せてくるのは…温もりを求めるが故だと、知っていた。
ケイト「私は…両親から、愛情というものを受け取ったことがありません。
まともに与えてくれたのは、姉ぐらいです。
いえ、母も与えてはいるつもりだったのでしょうけれど…何分、愚痴の発散場として利用されることがあまりに多かったので;
でも…最期の最期で護ってくれました。
父は……父は…ずっと、ストレスの発散場としてDVを受けてきました。高圧的な言動が多く、優しさなんて…一度も向けられたこともなかった。
いじめっ子も、そういうことをやってくるのも…ほとんどが男性だった。
無口だったのも、父親のそれによる反射的なもので…たった一つでも言い返せば殴って蹴られてぶちのめされてばかりだったから…です。
気付いたら…声が出なくなってました。精神的なものだと、後になってから知りました。
いるわけないって思ってた。
理解してくれる人も、愛してくれる人も、受け入れてくれる人さえも…全部、諦め切っていた。
現われるわけないんだって…思い込んでいた」
自己紹介のつもりか…
涙を同じくにじませながら、彼女は身の上話を続けた。