第35章 成長
ケイト「…皆のお陰だよ//
神様のお導き…運命だと、僥倖だと思ってる。
自分を知る為に、他との違いを知る為に、他者は存在する。
学ばせてもらってる側なんだ、私は。
私は…フィンと一緒に居る時間が好きだ。
共に触れているだけでいい。それだけで十分幸せなんだ。
たったそれだけで幸せを感じられるのは…父親やいじめっ子っていう男性から何度も何度も自分という個を殺され続けた結果が、重く関わっていると思う。
それがあったから、この幸せにまで繋がった。
だからさ…本当によかった。
どれだけ頑張っても、どれだけ合わせようと努力しても…不快に思う人は思うんだ。
相性っていうのは誰にもあるし、考え方や見方が違うから…受け入れられない人だって山ほど居るんだ。
報われたかった、自分は不快な思いをさせたくてそう動いてるんじゃないって…行動や態度で伝えたかった。私は口下手だから…迫られると父親のフラッシュバックで声が出なくなるから…生まれつきずっとされてたそれが一瞬で浮かぶから…それを人のせいにしてるって思う奴は思うし、人によって苦しんできた人の中にはそれを受け入れてくれる人もまた居る。
それが堪らなく嫌で、だから憎しみや怒りに変わってるんだと思う。
うまく付き合っていくしかないんだ。この怒りも憎しみも、理由がある。ちゃんとした理由があって起こっているものだ。
なら…どう折り合いを付けるのが一番なのかなって…そう考えて得たのが、さっき言ってたことなんだ」
フィン「…なるほどね。怒りも憎しみも飲み込んで押さえるのではなく、その自分自身と向かい合って共に生きる、か…」顎に手を当て
ケイト「うん!
フィン、とっても長くなっちゃったけど…付き合ってくれて、本当にありがとう。
お陰で自分を見つめ直せた。
その上で…自分は自分という形でしかないんだって、受け入れることができるようになったよ。
精一杯やったんなら何かを言われることを恐れなくていい。
それごと自分という存在でしかないんだって、今では思うよ」
そう微笑みかける彼女に、僕は笑った。
「本当に…成長したね」、と――
出会った頃からすれば、随分としっかりしたように感じた。
いつでも自分を投げ出すばかりだった彼女がここまで変わった。
変われた…そのことが、とても感慨深かった。