第35章 成長
島から出る船に再び乗った後、一昨日の内に予約してあった体験をさせてもらう。
まずは一本釣り。
次は海鳥と触れ合い、餌やり。
前々世の生まれ故郷に行った後、そこで泊まるという予定を伝える。
船の上、一本釣りで釣れるまでの間に…ケイトが何やら考え込んでいた。
フィン「…ケイト?」
ケイト「街の人達のこと、考えていた」
天を仰ぎ、見上げながら両手を後ろの床に付けて考え込んでいた。
そんな時、ケイトではないケイトがいると…そう感じた。
ケイト「『そんなことして心も痛めないような人に理解して欲しいんか?
万人に理解なんてされるわけないだろ?
その怒りは、期待だ。なら、最初から期待しなきゃいい。
期待も怒りもどうせ無駄に終わるくらいなら、最初からするなって話だ。
怒らなくていい。それで相手は変わんなかったろ?
相手の在り方は相手の在り方だ。本人は、本人でしかない。
今頃、お前がどんなに苦しんでいたとして、その時間も考えないで楽しい日常とやらを謳歌できるような人間だぞ?
お前が悪評をばらまかれて苦しんでた時、勝手に聞き間違えて間違えた時、お前がわざと間違いを教えた悪人だって決め付けてばらまくような奴だぞ?
確認も取らないで真相を決め付けて、自分から見えるそれだけで全部勝手に決めつけるような奴だぞ?私から見たらだけんども。
……お前は…そんな奴にまで理解されたいんか?
お前にとって…一番理解されたい人間って、誰だ?』
「『ロキ・ファミリアの皆』だ!」」
フィン「!」
ケイトに戻った。だが再び雰囲気が変わる。
ケイト「『なら、期待すんな。
あんな人間に理解されたとして、お前は何を得る?嫌な思いをさせられた時間はどうあっても消えねえだろ?
憎むだけ無駄だ。相手はまた別の誰かをそうやって生きてる。
争い事が嫌いで、父親のそれのせいで言葉が出ない。傷付き続ける…それでお前はどうしたい?
理解なんてされたいなんざ、期待するだけ無駄って話だ。
逆に学ばせてもらったんだ。
ありがとうでいいだろ、ごめんは目一杯自分にやれることやったんだから言いたくないんなら言わないでいい』
「……そうだね…それごと、私って人間だ。
フィン…私、迷惑かけてない?」」
天をずっと見つめていたままだった彼女は僕の方へ向き直ってから不安気な目で見つめてきた。