第35章 成長
僕の貫こうとした道は、偽善よりも重い。
心からなろうとした英雄とも違い、心から相手のことを考えてじゃない。
小人族の復興のことだけを考えての、清濁を併せて呑んでもなお貫かれる『打算』に近い。
だが…ケイトのそれは、英雄譚に必ずついて回る「偽善」ですらなく…
純粋に、相手の心を想っての「真心(本心)」だった。
だからこそ、天然の英雄よりも眩しく感じた。だから憧れた。惹き付けられた。
僕が彼女に惚れたのは…その真心あってのものだと、今になって強く想う。時を経るほどに、強く感じている。
純粋過ぎる、真っ直ぐ過ぎる…そんな彼女が、好きで仕方ないのだと。
フィン「ケイ、ト…」うとうと
ぼぉー!!!
彼女は…僕の両親によく似ていた。
どれほど侮辱されようと、奪われようと…決して仕返そうとはしない。
だからこそ、その続きに両親との続きを重ねてしまっているのかもしれない。
両親を失う以上に辛いことなど、今後二度と無いと思っていた。
しかし…彼女に庇われて失いかけた時、果てのないほどの絶望が胸の内を占めていた。
そして彼女が哀しみで泣き崩れ、精神が崩壊した時…死ぬほどの怒りが身を焦がした。
あの主犯との戦いで呼吸が止まった時は多少心配したが、精霊寵愛IIですぐ息を取り戻すだろうことはわかっていた。あの呪詛の時とは違うから。
船の汽笛を耳に受けながら…
夢の中でも変わらず僕へ笑顔を向けてくる彼女に、ケイトに…想いを纏めていた。
フィアナになろうとした。なれなかった。
人は、決して他者になり得ない。たとえ上辺だけなれたとして、同じになどなれない。
見た目が同じだとして、全く同じ人などいない。好き嫌いも違う。何もかもが…違って当たり前だ。
違うが故にぶつかり合う。刺激となる。成長となる。
天真爛漫な彼女が好きだ。純粋無垢な、どこまでも真面目なケイトが…
いつも人の気持ちを念頭に置くケイトが、僕は堪らなく好きだ。
だが…
始祖神としての記憶を取り戻してから、彼女は変わってしまった。