第33章 ケイト調査票
ロキ「どちらも…互いがあってこそやろ。
フィンがいたから、身を挺して守ってくれたから…ケイトは、自分を大事にしてええんやって想えた。
自分と向かい合って、始祖神という人格に飲まれまいと抗った。
ケイトがいたから、フィンは『幸せ』ってもんを得た。
大好きで仕方ないいうケイトの純粋なまでの好意に触れて、打算も利用も歯牙に掛けん態度が…清さが、心地よかった」
フィン「ああ。否定はしないよ。
事実…それに罪悪感も無かった。
全て覚悟の上で突き進んできたからね…
だからこそ、なのかな…(遠い目)
自分がひどくちっぽけに見えた。人の評価や名声なんて、簡単に変わる。
勝手に失望して、期待して…また、絶望して…自己評価もまた、曖昧で移ろいやすい。
……ケイトは…ずっと、独りだった。
理解者を得て、やっとという時に限って…街の輩はそれを殺した。
そして死んだ要因をケイト一人に押し付け、早く死ね殺すぞと追い立てた。
勝手なものだ。加害者が動かなければ得ないものだったというのに…
実際に殺した輩はのうのうと生きていた。それも、処刑されるまでね…
だからこそ…あのまま街に置いていくなんて選択肢はこれっぽっちも無かった。
ましてや…正すなんて次元を超えている。
彼女にとって、あの街は…絶望そのものだっただろう」
ロキ「せやからこそ…ケイトはフィンに惚れた。
第一…守ってくれるもんなんて、一人もおらんかった。
一緒になって傷付けるか、はたまた笑って見て見ぬ振りして青春を謳歌するか…その二つしかおらんかった。
そして挙句の果てには…加害者は、ケイトの苦しむそれを見て高笑いしとった。それを何年も何年も…
得るだけで、接するだけで、学校で先生に質問するだけで…
調子に乗っとるやら死ねやら、随分と好き勝手にケイトを罵倒しとったもんな。
わざわざケイトだけでなく周囲にまで聞こえるように声張り上げて、孤立し続けるように…
全員そうに決まっとる。そう思うのに時間はかからんかったやろうに……
それでも…捨て切れん馬鹿なんや。ウレイオス(始祖神)も…ケイトも…」遠い目
椅子に腰かけ座ったまま天を仰ぎ…ロキは呟いた。
その消え入りそうな声は、どこか寂し気で…遥か昔のことを想起しているようにも見えた。