第32章 破滅の狼煙
その日の晩、大食堂にて食べ終わった後で始祖神として目覚めたことも伝えることにした。
ケイト「常に、周囲及び大気中の魔力との一体化を感じてる。
それが龍人化で、慣れていく度…始祖神の『138億年もの記憶』が一部とは言え雪崩れ込んでくる。
私とは違う自分がいて、それを感じて…それでもものにしておかないと護れないから…頑張ってた。
でも…勝てるわけないんだ。いくら自分を保とうとしても…無理なんだ。
たかが15年、前世では28歳で死に、前々世では52歳で死んだ。
…合わせてもたった95年ぽっちしかないんだ。この世で過ごした時間は。
魂が生まれてからは2800年以上…
138億年もの記憶に、それを経て築き上げられてきた人格に…飲まれて、消えていくと思った。
数字にして、約493万倍…たった1滴の水に、湖を叩き込むぐらいのものだから…
慣れれば…何とかなると思っていた。
力を使って、始祖神の時の記憶が蘇る度、それに戻れば…皆へ抱いてるこの感情も変わっちゃうのかなって…使うのが怖かった。戻るのが怖かった。
全力を解放すれば…確実に飲まれるのは目に見えてたから……
自分は自分だって、関係ないって…思いたかった。アルとディの手前、言えなかった。
弱音なんて吐いたら、その瞬間から飲まれそうだったから」
フィン「……一つ聞いてもいいかな?」
ケイト「?うん」
フィン「…今の君は、僕達の知っているケイトと、始祖神ウレイオス…果たして、どちらなんだい?」
ケイト「……^^//
結論から言うと、両方だ。どちらでもある。
私というそれを形成しているのは…何も、ここでの経験だけじゃない。
最初こそ…前世や前々世の記憶、始祖神の記憶に振り回されてた。
自分って誰だったっけって…正直、混乱した。
それが…フィンの背の上で、咆哮する前でのことだ」←737ページ参照
フィン「……つまりは…最初に発動した時には、既に…」
ケイト「うん…タナトスとの会話の時には、既に始祖神の記憶に埋め尽くされていた」←734,735ページ参照
フィン「僕の呼びかけに応えたかのように解いたのは?」←736ページ参照
ケイト「…」
フィン「…ただの、気紛れか?」
ケイト「違う…
あの温もりに、心底安心したんだ。
敵がいなくなってからも…周囲を未だ、警戒してたから」