第32章 破滅の狼煙
ただ…唯一の誤算は、アイズが「オラリオ中へ伝達させる『神の鏡』」を持っていたことだった。
それをきっかけに、より鮮明に残された映像は英雄譚として残される。
と言っても、これらはあくまで後の話だ。
力を使い果たしたのか…天からケイトが降ってくる。
抱き止めた時、光がケイトと私に差し掛かった。
テロップ『後に、この光景があまりに幻想的だった為、英雄譚の挿絵に用いられた』←余談
私は何度も呼んだ。何度も名を呼んだ。
自然と涙が出てきた。
後になってから知った。魔力を通して…
その記憶と戦っていたこと。
その人格に飲まれまいと、自分の過去の記憶ばかり思い返していたこと。
その想いに埋もれることで、自分という人格を保とうとしていたこと…
どれも…ケイトは、教えてはくれなかった。
涙が頬にかかる。目に入る。それでも起きなかった。
いつも、そう…肝心な時に、護られてばかりっ(涙)
そんな時…精霊・ブランシェが光の姿で現れた。
彼女は浮いたまま私とケイトへ寄って笑いかけた。
ブランシェ『守って、あげてね』
アイズ「え?(頭の中に、直接声が?」
ブランシェ『この子は…意外と脆い所が多いから。助けてあげて』
アイズ「…言われなくても、そのつもり」きっぱり
ブランシェ『そう…任せたわよ^^
ノアール…今、あなたの傍に行くよ。大切な、人の中に。
今なら…あなたの気持ちが、よくわかるよ……(すっ)←ケイトの背に手を触れる
ノアール…ケイト…本当に、ありがとう(微笑&涙』しゅんっ
その言葉の後、ブランシェは消えた。ケイトの中へ…
それまで叶えられていた魔法まで解けたことで、ケイトの背が119.6cmに下がっていた。
アルが「この時のお母さんは大きいんだね」と言っていた理由がわかった。←973ページ参照
どうやら…ブランシェは精霊寵愛として生きることを決意したみたい。
その矢先、ケイトは目覚めた。
私はそれに…抱き締めながら、気付けば泣きじゃくっていた。
その名を呼んで泣き喚いた。
失うかと思ったから余計に。
落ち着いてから、私は無事ケイトを背負って帰ることにした。
その道中は、まるで凱旋のようで…(実際にそうだった)
花吹雪をケイトごと頭上からかけられたり、沢山の祝福が飛び交った。