第32章 破滅の狼煙
「約束!また会った日には、決闘ごっこしようね」
「うん!^^それも全力でね」にこにこ
最後に交わした約束は、至極シンプルなものだった。
「視野を広げよう」ぽつり
前を向いて、森の中を駆け回って、色んな生物と触れ合って、理解して…
あの一週間があったから、私は私たりえた。育ての家族と共に生きる為の礎になった。
「絶対…護るから」
幼い頃、ブランシェに抱いた気持ち…想い…愛情。
それは確かに、始祖神の記憶を全て引き継いだ今もなお…胸を高鳴らせ、焦がす。
この想いだけは…絶対に、消えてなくならない。
必ず、帰る――共に…あの場所(ロキ・ファミリア)に!!
ケイト「大切な…大切な、友達なんだ!
返してもらうぞ!!」
18階層を除いた場所にある闇・力を増やすもととなっているそれを、圧倒的な力で迷宮ごと全て浄化させる。
周囲に展開される闇ごと全て包み込み、祓いながら尻尾で捕らえ
口の中に呑み込み、体内で全方位から分離魔法をかけて精霊とモンスターに分離させ
口からモンスターだけを吐き出し、モンスターから解放する為に左後ろ足で踏み潰して倒し、蒼い角二本と魔石だけが足元に残った。
クリエイトと唱えなくとも、考えた瞬間に叶ってしまった。
魔法とも呼べず、神の力と化したそれに…私は呟いた。
ケイト「解除魔法」ぽつり
その次の瞬間、私自身の『身体にかかっていた『全ての魔法』』が解除された。
変換魔法が解け、一度光となった後に人間の形を成していく。
全ての自らに掛けられた魔法が解除されて人の姿に戻り、その時にお腹の子もまた別空間ではなく体内に戻った。
精霊だけは口の中から出ていって、私は気絶した。
全長15mの細長い龍の姿から人に戻って崩れ落ち
中空に倒れ込む私に、アイズは駆け付けて受け止めた。
アイズ「!……身体が…小さくなってる?」
身体を大きくしていた魔法もまた同時に解除されたようで、身長が縮んでいたらしい。
それから何度も名を呼ばれたらしいが…数分ほど意識が飛んでいた私には、知る由もなかった。
こうして、世界の破滅をかけた戦いは終わりを告げた。
あのままブランシェが外に出ていれば誰も止められず、世界のありとあらゆる全てを食らい尽くしていただろうと…大々的に英雄譚に載せられた。