第32章 破滅の狼煙
「ひっく…うっ;」
周りの大人は助けてくれない。
父親からの暴力からなど、助けようとする人など誰一人として…
出会う前の私は、泣いてばかりいた。
家で泣けば殴られるから、どこにも居場所はないから…誰も来れない場所で泣いた。
そこでならと、いつも池のほとりにいた。そこで思う存分泣きじゃくっていた。
誰も受け止めてくれないから、助けてくれないから、そうする以外…何も手につかなかった。
いつものように池のほとりで泣きじゃくる中、声をかけてくれた子供がいた。
「ね、行こ」
「!…」
「ノアール!^^//」手を差し出す
「ごしごし)うん!^^//」頷
「あっはっはっはっ」「はっはっはっ」
森を駆けた。森の中にある小川の中を走った。水をかけ合った。
私の4歳の誕生日から、たった一週間…それが、ブランシェとの共に過ごした時間。
「ノアール!」
ノアールでいい。助けたい。護りたい。
…助け出したい――
あの日、あの時…ブランシェとの遊びが、唯一の心の拠り所だったから。
「助けて」
「当たり前だ!」
だから、両親をも取り込もうとしている暴走した力から助け出した。
全力でクリエイトを用いて、精霊としての力の暴走分のみを封じる結界を施した。
精霊ということがわかられない副次効果付きの。
そうして反対派の両親にブランシェは連れられ、ヘレイオス街から去っていった。
「絶対、忘れないから!
ずっと…ずっと、待ってるから!!」
「ノアール…ノアールぅうううううう!!」涙
「ブランシェっ(うるっ)
…ブランシェえええええええええええ!!」涙
その日、哀しみ以外の涙があることを知った。
その存在が、嬉しかった。ただただ、その存在が救いになっていた。
その日から、私は泣くのをやめた。
泣いた所でどうにもならないし、それ以上のものを…ブランシェが与えてくれたから。
ブランシェとの想い出が、いつでも心を温めてくれたから。