第32章 破滅の狼煙
「龍の力」を使う度、「始祖神の力」が発揮される度…その力から、『始祖神の時の記憶』が雪崩れ込んでくる。
薄れていく『自分として抱いた想い』を…認めたくはなかった。
何より…想いが薄れていっていることを。
失う哀しみに縋り付いて、あの強烈な想いにしがみ付いて…
みっともなくても、この世にいるのは『ケイトとしての自分』だと…そう、思いたかった。
「始祖神としての自分」に染まって、消えてしまいそうになる自分を感じる度…怖くて、堪らなかった。
フィンが好きで仕方ない想いまで消えてしまいそうで…
そんな自分に…怒りが増して、仕方なかった。
力を…使いたくなかった。
それでも…それ以上に、失いたくなかった……
全てを失った悪夢を何度も見る度、フィン達の愛しさが増して止まらなかった。
だから…飲み込まれていく中、それでもなお力を使い続けた。
こんな力…使いたくなかった。
でも…違った。
フィンは…その変化に気付いていた。
それでも変わらず接し、受け入れてくれた。
「自分を大事にして欲しい」と…何度でも、訴えかけてくれた。
何より…何度でも助け、大事にしてくれた。
差別しないでいてくれた。愛してくれた。護ってくれた。
だから――決めたんだ。使うって…もう、恐れないって…
きっと、何度でも……私(ケイト)という存在を、取り戻してくれるから――
悪夢を見るようになったのも、「自我を始祖神のそれに飲み込まれたくない」という自らの意思によるものなんだろう。
でも…答えはもう、わかってる。『どっちの自分も…私なんだ』って。
だから――たとえこの記憶が飲まれたとしても…私は…何度でも言うよ。
お前(フィン)を愛しているって、心から…焦がれているって!!
始祖神が何で自分の記憶を残すようにしたかなんて、わからない。
でも、きっと――『今後に生かせ』という意味なんだと思う。
だから…今度は…自分を投げ出すやり方じゃない!
人の為だけじゃなく、自分の為に使ってみせる!!
そう決意を新たにした瞬間、髪が力の色、純白に染まり輝く。
瞳が焦げ茶色から金色に変わるだけでなく輝きを放ち、瞳孔の形が丸からトカゲや猫と同じ縦長になる。
純白の光を宿した魔力が、目の前の闇を一気に18階層まで追い込んでいった。