第32章 破滅の狼煙
朝7時頃に一時起きた後、心配そうな表情を浮かべたフィンが覗き込むも…再び眠り…
9時頃に起き、誰もいないことを確認した後、お腹の子を別空間へ指定しつつベッドの布団の中に残す。
そうしてベッドから立ち上がり、カーテンに手をかけて開ける。
晴れ渡る空とは裏腹に、オラリオにいる人達は誰もが不安そうな顔で我先に外へ出ようと避難していた。
治療院に置かれてあった『神の鏡』に映されていたものは…
テロップ『世界の危機?』
ギルド員(男)『ぎゃああああ!!』
黒いそれに触れた瞬間、それは瞬く内に拡がっていって咄嗟に引っ張ってもなお腕しか残らなかった。
触れるのも免れたとしても鳥は羽毛も皮も残らず、一日と持たずに死んでいった。
場所はバベルの塔の近く。
あと、ダイダロス通り…人造迷宮クノッソスの出口からも出ているのが見えた。
そんなの、どうだっていい。
一番大切なのは…護らないといけないのは、大切な皆だ。
そう考えながら、「必ず帰る」とベッドに置手紙を置いて瞬間移動で移動した。
すぐ目の前でエイナさんが離れない手を前に泣き崩れていたのが見えた。
逃げ惑う人々が増える最中、私だけは前へ前へと進んでいった。
その腕に触れ、復元と唱えた瞬間…衣服ごと再生され、残っていた魂もまた定着した。
エイナ「あ…」
ケイト「怪物はどこにいる?」
エイナ「18…階層です」
ケイト「そっか…」ちらっ
バベルの塔から漆黒の狼煙とも言える魔力が出ている。
ギルド員はその調査に赴き、危機だと明確に伝える為に『神の鏡』まで持たせたのだろう。
ここからちょうど東、ダイダロス通りの人造迷宮クノッソスに繋がる旧地下水路の出口から『も』出ていた。
それを見やると共に、魔力を解放させ…周囲の魔力と一体化させつつそれを塞ぎ、迷宮の出口まで覆い中に居た人達を助けた。
と言っても、復元で蘇らせるのは『人格とも言える意思を有するもの』だけに留めている。モンスターもいたらしいから。