第32章 破滅の狼煙
意思を宿したモンスター、それは共通してモンスターから襲われている?
会話が可能だからか?
人の思考と同じそれを持っているのを感じ取り、襲っているということか?
ドンの驚異的な学習能力によって、簡単な会話なら筆談ですぐできるようになっていた。
これもまた、ドン自身が「意思疎通したい」という強い意志があってこそ成し得たのだろう。
だが…もしモンスターを狂わせる道具があればと考えてしまう。
集める道具(血肉 (トラップアイテム))もあるからね。
念の為、そういった類のものは一切効かないものを装備させているようだけれど…
というのも、背負っている小さなリュックにその状態異常及び呪詛の全てを無効させる効果を持たせている。
よもやそのリュックが空間収納庫で不壊属性が付与されている、などとは誰も思わないだろうね…
と、これは関係のない話だった。
問題は…見分けがモンスターにしか付かない点だ。
本来、モンスターは人を襲うものだ。
牙も、爪も、魔法も…全てを人を傷付け、死に至らしめる。
殊更、冒険者としてはそれを留めてしまえば判断が鈍くなる。
それに伴って攻撃までが遅くなるだけでなく、モンスターからの行動への対処が遅れることによって最悪死に至る。
攻撃の手が鈍れば、それだけ死のリスクが高まる。
ドンのように意思の疎通を図ろうとする者ならいい。
鍛練の時や、余程の緊急時にしか爪を一切出さない。出そうともしない。
いや、ケイトがいなければ恐らく気付けないまま殺していただろう。
よしんば気付いたとしても…自らを一瞬で屠れる凶器を常に持っている者と、どう共存していくかという話になる。
ケイトと同じく、力を誇示しない者ならばいいが…
十中八九、オラリオの市民だけでなく冒険者までもが混乱に陥る。
テイマーとしてそのモンスターを使役するという手もある。
だが…キリがないのは目に見えている。
この情報を共有すべきか否か、キャンプ地の本営で一人考えあぐねていた。
(他は水浴びや警備に行ってしまった。
そろそろ食事の時間なこともあり、その下準備に入っている者もいる)