第31章 穢れた精霊
『……』
黙ったまま、聴き入るばかりだった。
目を瞑ると、ケイトの持つ記憶と想いがそのまま(ケイト視点)に伝わってきた。
伝わってきたそれらに、涙を浮かべる者が数多くいた。
ロキに至っては滂沱の涙と共にケイトへ抱き着き、そのまま泣きじゃくっていた。
ケイト「強くなった…はずだった。
心も要らない。感情なんて要らない。
全部…無駄だった。
一番守りたかった人達は…必ず…必ず!手をすり抜けて死んでいくっ;;
どれだけ守りたくて努力しても…
(ヴェルフィンに鍛冶を教わり、修業に付き合ってもらう光景がよぎる)
どれだけ時間を共にして回復しても…!
(オリヴァが母のように寄り添い、真っ直ぐに向き合ってくれた。家事を手伝う光景がよぎる)
どれほど想い焦がれてもっ!!;
(シルキーに大好きだと言われ、嬉しさのあまり高い高いをしながらその場で回転して互いにはしゃいだ光景がよぎる)
何度…何度も…何度もっ;;
あの時、死んでた方がよっぽど…よっぽど、嬉しかったのに;;」
ぎゅううう
その泣きじゃくるケイトを前に、僕は抱き締める力を強めた。
僕はそうは思わない。
そのお陰で出会えた。
幸せというものを、たくさん与えてくれたのだから――
ケイト「だから…だからっ……
頼むから、守ろうとしないでっ;護る為に…傷付かないで!
誰かが死ぬのは…たとえ何であっても嫌だっ;;
誰かを殺せば、こんな哀しみを味わう誰かが必ずいるんだ。
だから…そんなのは、嫌だっ;;;」ぼろぼろ
フィン「ケイト…」
ケイト「う(頭を振る)
…ひっく;;
ごめん…皆に会えたのは、光明だった。
でも……そんな、単純な問題じゃないんだ。
『わかった…自分も、相手も、どっちも守る。
どっちも傷付けない。護って、帰って、安心させる!!
約束する!絶対…絶対、無傷で帰ってくるから!!』ぼろぼろ
って…返せたらいい。
心の内の自分も…そう返そうとしていた。
けれど、到底そうは思えない。
絶対に護れるものなんて…失わないものなんて、この世には、一つとしてないんだ。
あるとすれば…失った後、どう乗り越えていけばいいかという術だけ。
今もなお蘇り血を吹き出す傷との向き合い方も、苦しみが何度もフラッシュバックするそれとの共存も…」