第31章 穢れた精霊
フィンの抱く『張り裂けそうな想い』が、私に向ける懸想まではっきりと伝わってきた。
思念伝達によって、詳細に至るまで…
ジワジワと傷口に塩を塗られたように感じるほど、想像を絶する凄まじい痛みが沁み入る。
そしてそれは…姉を失った時、母を失った時、育ての家族を失った時に味わったそれと重なった。
ケイト「私だって…私だって!同じ気持ちだよっ;;」
6歳の時…姉は、大剣を抜こうとしてくれた。
父からベッドに縫い留められるよう左脇腹を貫通させられた。
精霊寵愛によって死ねない中、私の血が姉の傷口に入った。
ケイト『(助けなきゃ…助けないと!!)』
左手を伸ばす、それでも届かない。
ケイト『クリエイト、戻れ!治れ!治れ!!
頼むから!自分の全部引き換えにしてもいいから!』
ぱぁんっ!!
からからから
集めた魔力も虚しく、姉の体は内から破裂し、金属の髪止めが転がってきた。
ケイト『ぁ…ぁぁっ;;』
目の前の光景が信じられず、信じたくはなく…思わず息を呑む。
ケイト『自分は…無力だ。私は……無力だ!(ぎりっ!))
神様!…いるのなら、本当にいるのなら…お願いだ!
自分なんか無になっていい。消えていいから!
全部を、私の全部を無かったことにしていいから!
自分なんか要らないから、私を殺していいから!!
姉ちゃんを助けてっ!この大剣に触れる前に戻して!!』
溢れる涙、暗闇の中…返ってきたのは静寂だけだった……
嫌だ…(ドックン)
嫌だっ;
こんなの…嘘だ……夢だ!
幾度思い込もうとしても、滂沱の涙は止まらない。
姉だった亡骸が倒れ伏して動かない光景も、剣から伝わってくる冷たさも、夜の冷えた空気も…
左手に触れた温かな血が、時間と共に冷たさを帯びていくそれも……
全てが、現実だと…ありありと伝え、私の目に、感覚に、焼き付けては離さなかった。
ケイト『うわあああああああああああああああ!!;;』
当時…私に赦されたのは…哭くことだけだった。
伸ばした左手には、姉の血が飛んでいた。
手に触れる直前に破裂し、絶命した。
動けないまま、ベッドに体を縫い止められたまま
姉の死を、血に蝕まれて死んでいく様をまざまざと見せつけられるだけだった。
そしてそれが…最初に味わった、大切な人の死だった。