第31章 穢れた精霊
学んだ知識に慢心し、身の程も弁えず、勇断を為そうと躍起になった。
百の知識が暴力にあっさりと殺されることを、その時に身を持って知った。
両親に庇われなければ、死んでいた。
両親に希望を見出す一方で、僕達三人を置いて逃げ出す同胞達(小人族)に絶望した。
何が言いたいかと言うと…詰まる所……
あの当時にケイトが見せた、血に塗れながら笑みを浮かべる様は…力尽き、動かなくなったそれは…←532ページ参照
僕の両親の最期と全く同じ――
「守れてよかった」と言わんがばかりのものだった。
フィン「頼む…」
誰かと愛し合う未来など、人並みの幸せなど、関心を持ってはいけないと思った。
持ってしまえば…10歳から今までの歩みが、これまでの道のりの全てが無駄になってしまう。
そう、思っていた…ケイトに出会うまでは……
あんな何気ないやり取りが、幸せで堪らなくなることなど…一度として、無かったんだ――
フィン「また…失わせないでくれっ」
啜り泣くような震えた声が、自ら(僕)の耳朶をも打つ。
返事もないそれに、抱き締める力を強めた。
幸せを求めなくなってから、32年と約11か月…
君と出会い、時を共に過ごし…楽しくて仕方なかった。
一緒に居るだけで心が弾んで、目の前の同胞に夢中になった。
フィアナについてあのように考えてくれる君が、愛しくて堪らなかった。
フィアナのように助けるそれに、強く惹かれた。純粋過ぎるその態度が、可愛くて仕方なかった。
好きで、好きで、仕方なくて…誰よりも愛しくて、両親以上に大切な存在――
その想いを自覚したのも――また、失いかけた時。←717~719ページ参照
そして…再び、護ると誓った時(721ページ参照)だった。何度でも誓うと、心に強く刻み込んだ。
『この幸せを手放したくない』と…心が何度も何度も、訴えかけては止まらなかった――
溢れ出す涙も止められず
両親を失った時の痛みと共に、ケイトを失いかけた時の痛みに焦がれ
縋り付くように抱き締める力を強め、ただただ震え泣くばかりだった。