第31章 穢れた精霊
ケイト「でも…これに頼る気はないんだ。
魔力を繋げて、力を貸してもらっている状態に近い。
余程の時にだけ、頼りたい」
リヴェリア「お前が死に掛けた時に使え」
ケイト「え?」
リヴェリア「…誰かを助ける為だけに使うんじゃない。
お前自身を守り、帰ってきてくれ。
たとえ、どんな敵であったとしてもだ」
ケイト「!!」目を丸くする
ガレス「そうじゃの。
実際、あの時十字架のそれを使っておったのは皆を不治の呪いから救う為。
自らを救う点に関しては「あわよくば」程度にしか思っとらんかったじゃろう」
ケイト「ぅっ;」ぎくっ!
フィン「…ケイト…君が僕達を失いたくないというのはわかる。
でも…僕達もまた、同じように想っていることに嘘偽りはない。
…だから……君を、もっと大事にしてくれ」
ケイトの頬へ手を差し伸べ、撫でる。
大木の下、木陰が風と共に形を変えて揺れる。
フィン「……僕も…君(ケイト)を失いたくない」ぎゅうっ
抱き締める。その頭を、背を、抱き寄せながらしっかりと。
両親は最期…笑みを浮かべていた。
死んでいってもなお、庇った後もなお…それでもなお、僕の未来を望んだ。
フィン「…あんな思いは…もう、たくさんだ。
ようやく…また、やっと見つけた『希望』なんだ。
だから…頼む」ぽとっ
ケイト「!」うるっ
フィン「…僕を…置いて、逝かないでくれっ」
ぼろぼろと涙が零れ落ちていった。
あの時…俺(ディムナ)という人間は死んだ。全てを一族の為に捧げる道を自分で選んだ。
僕を庇い両親が殺された時から…僕の中の時間は、止まったままだった。
両親に応えたかった。
嫌って唾棄したそれまでの自分を恥じた。この恩を返したかった。
何より…本当は、愛したかった。
その未来を夢見てしまう自分がいた。両親との楽しい日々を、夢で見るほどに。
しかし…殺した。
何度もその未来はないと、もう遅過ぎる、もういないのだと、自分に言い聞かせた。
小人族というだけで下に見られ、奪われ、いいようにされ、自らを卑下する両親を嫌った。
僕は自ら両親を唾棄し、知識を身に付けることに奔走し、両親の持つ『勇気』に気付けなかった。
一族の『希望』だと…気付いた時にはもう、事切れる寸前だった。
庇われるその時まで、気付けなかったから――