第30章 ノアール
ケイト「ティオネにティオナにアイズにレフィーヤ、椿は話したことがあるだろう?
一方的に出て話されただけだけどさ」
ブランシェ「そう、だったんだ…」俯
アイズ「うん…」
ティオナ「あ、だったらさ!一度離れることって
ケイト「既にノアールは実体を無くした状態だ。
離れればそれはもう、魂だけの存在となって天界に帰らなくてはいけなくなる。
たとえブランシェと一体化させるとしても…その時は、私の死ぬ時だ。
精霊寵愛とは、どちらを主体とするかで変わる。
ブランシェが…両親が死んだ直後、自らを主体として精霊寵愛を行使したように」
『!!』
ケイト「一体化するとしても、互いの合意があってのものだ。
私は何度も助けられてきた。だから抵抗なくしてきた。
今、私は…妊娠した身だ。今ここでそちらに宿ろうとすれば、お腹の子ごと実体を失って死ぬ。
正確には身体を失って、助ける力となる。
……ブランシェ、もう力は使いこなせたんだよな?」
ブランシェ「…うん…遅くなって、ごめんね」
ケイト「いや、ならいいんだ。迷宮には飲み込まれないでくれ。
封印を今解くよ。長年の約束だったしな」
力を扱いこなせれば訪れること、その時に封印を解くという約束も交わしていたらしい。
そうして封印を解かれた後、彼女は去っていった。
笑って、「旅に出る」と一言残して…
「街の人達は殺しちゃダメだよ?」と言うと、くすりと笑い「あなたが望むのなら」と返した。
空に消えていった彼女を見送りながら、ケイトは思いを馳せていた。
今後、お腹の中の子にどう影響するだろうか?
ノアールはまだ、子供の中で生き続けるのだろうか?
もし自分と世界を天秤に掛けられたら私一人を差し出すつもりだった…でも、大切なものが増え過ぎた。
私は…もしそうなった時、一体どうすればいい?
数々の疑念が尽きぬ中、雲は晴れて…一面の星空が彼等彼女等を包み込んでいた。
晴れ渡った空は、そんな疑念など小さなものだと語っているかのように見えた――