第30章 ノアール
私のことが嫌いになったの?
何で…どうして、そんな眼で私を見るの?
どうして…私の目の前から、消えようとするの?
脳裏にお父さんとお母さん、幼い頃…失うまで共に居た色んな人種の人達の姿がよぎる。
7歳の時に失った、大切な人達…それと同じように去っていく姿が浮かんでは消えて…
一瞬の懊悩と共に、涙を浮かべながら謝った。
怖かった…また、消えられるのが…怖くて、堪らなかった。
嫌われたかと思うだけで、考えるだけで…震えが止まらなくなった。
怖くて仕方なかった…また、目の前で消えることが。
大切で仕方のない人だと、そう想うから…嫌われることが、とても…とっても、嫌だった。
いなくなった大切な人達の姿(お父さん、お母さん)が、何度も頭をよぎった。
アイズ「じわっ)ケイト…お願い…」
ケイト「へ?(あれ?なんか様子が変?」眉顰め
アイズ「お願い、だから…嫌わないでっ;
目の前から…いなく、ならないでっ;;」ぽろぽろ
ケイト「!!!!??;」ぎょっ!!
涙が止まらなくなった。
この気持ちが何なのか、わからなかった。
前に失いかけた時の比ではないほどに、その涙は…止められなかった。
ケイト「あの…」わたわたわた
アイズ「ひっく…ぐすっ(ぼろぼろ)
お願い…消え、ないでっ;;」
ぼやける視界の中、ケイトを手探りで裾を握って引き寄せて
そのまま縋り、瞑目したまま抱き着いた。
それにケイトは背に左手を回して抱き締め、そっと右手で頭を撫でてくれた。
アイズ「温かい…)ぐすっ…ひっ;」
そう安堵する心とは裏腹に、涙は止まらなくて…
胸の奥にある「愛しい」と訴えかける想いも止まらなくて……
強くなることだけを求めていた頃は迷宮にばかり潜っていたのに、根本的に変わった。
それよりも大切なことを教えてくれた…
完成された武術、想いと共に築き上げられてきた力、目に見えないものの大切さ……
ステイタスにばかり目が行っていた。
そんな私を変えてくれた…強さを与えてくれた…
ステイタス抜きに、人は強くなれるものだと、身を持って教えてくれた。
身体能力の差を覆して、私を倒すことで…
その大切な存在(ケイト)に嫌われることが、嫌で、怖くて…堪らなくなった――