【イケメン戦国】プレゼントを探せ!~徳川家康誕生祭②~
第7章 【一月三十一日 夜半】~祭りの後~
「…え、」
思いもよらない言葉に口篭る私を、家康は今度こそ立ち止まり、じっと見つめる。
「元の世なら、寒い寒いと凍えなくても良いし、夜も明るい。娯楽があって退屈もしないし」
家康の翡翠の目が、廊下の端に置かれた行灯の火を浮かべて、ゆらゆらと揺れて見える。
「何より、戦もない、し。危険な目に、合わせる事もないから…そう、考えはしたけど。
何も出来ずに、流れに身を任せて、今こうしてるってわけ。
結局、俺があんたを離し難いんだよ…全く持って、自分勝手な話だね」
まるで自嘲するような、笑み混じりの顔。
本意じゃない事くらい、そこから簡単に読み取れる。
そうしてそれきり、黙ってしまった家康の顔を、じっと覗き込む。
元の世でも、帰ってきてからも、時折考え込むような表情を見せていたのを思い出す。
ずっと独りで抱え込んでいたのだろうか、と。
素直になれない心根が、漸く吐き出した言葉を受け止めて――
かち合わない視線がうろうろと。
所在なさげに彷徨うのを見止めたら、もうどうにも我慢が出来なくなった。
「家康ーっ!」
家康の態度とは真逆の、甘やかな胸の痛みそのままに。
ぎゅっと、その首元にしがみつく。
「な、何!?千花!!」
「家康のそういう所が好きだよー!三成くんにも言ったでしょ?すっごく際限なく、あり得ないくらい優しいところ!」
そして私は、ちらり、と視線を巡らせ。
なんともタイミング良く自室のすぐ前だと気付き、今度こそ、と決意を固める――