【イケメン戦国】プレゼントを探せ!~徳川家康誕生祭②~
第7章 【一月三十一日 夜半】~祭りの後~
ぺたぺた、きぃきぃと。
二人分の足音と、床の軋む音だけが響く、もう夜も更けきった廊下。
宴の後の死屍累々の光景に、いくら呑んでも変わらない信長さまは早々と天主へ上がり。
下戸の政宗が、苦笑しながら後始末を引き受けてくれて。
珍しく酔い潰れていない私は、家康と一緒に自室へと引き上げる最中だった。
普段なら、家康は部屋の前で引き返し、御殿へと帰っていく。
清い関係は、恋仲になってから一月と少し経った今日まで。
どちらも均衡を破ること無く、続いていた。
それに関して、不満があるわけじゃない。
私に興味が無いんだとか、家康にその気が無いんだとか、そんな境地の話じゃない事も。
大事にしてくれることを、疑ったことなんて一度もない。
でも、今日は。
決意を込めた手を、ぎゅ、と握り。
家康の方に向き直って、でも夜だから少し顰めた、決意めいた声でその名を呼びかける――
「千花、」
「いえや…!は、い?何…?」
丁度同時に上げられた呼び声で、出鼻をくじかれる。
そう言えば、宴の前にも何か言おうとしてたな、と思い当たり。
ちゃんと聞こうと歩みを止めると、歩きながらでいい、と促される。
「あんたの元いた世、を初めて見た。すごかった」
「でしょ?
私が色々説明してた事、あながち嘘じゃ無かったでしょ!」
「そう、だね。とにかく、凄かった。
想像もし得ない事が、次々に巻き起こって」
「うんうん!楽しかったよね!」
「それは、まあ…それ、で。俺は」
家康の、言い淀むような声が、ぽつぽつと夜の闇に溶けるように聞こえる――
「千花を本当に此処に連れて帰って良いものかと、考えてしまったんだ」