第1章 【序章】第1話 クエスト
いつまで経っても、妹分ではいられない。皆(仲間)に迷惑をかけたくない。そんな気持ちがあった。
時間にして、一分も経ってないと思うけど、長い沈黙、一時間以上経った様な気がした。
「ふぅ、やれやれ、この様子じゃ、言っても聞かんだろ。」
「…えっ?マカロフ、それじゃあ…。」
「頑張ってこいよ、☆。怪我には気をつけろよ。」
マカロフの言葉を聞いて、胸が熱くなった。自分が認められた様な気がした。S級になって日が浅いが、ようやく、自分がS級魔導師であることを認められる様な気がしたのだ。
「ありがとう!マカロフ!頑張ってくるよ!」
「帰ってきたら、祝い酒だな。」
「そうね。☆の好きなお酒、用意しとかなきゃね。」
「気が早いよ、二人とも。でも、楽しみにしてるね。」
「そうだ、☆。行く前にこれだけは覚えとけよ。――。」
こうして、私はその日の内にクエストのある村に旅立った。お酒はあまり飲めないが、皆と飲めることを楽しみにしていた。その約束が守れないと知らずに…。
【A級クエスト依頼の村_ツバキ村】
「ここが…、依頼の村…。」
閑静とした村だった。村の入り口近くにいたが、村人をあまり見かけなかった。
(様子が少しおかしい…。クエスト内容は、近くの森の遺跡調査兼遺跡の魔物退治だけど、それほど、魔物の影響が出ているの?)
魔物の影響のこと等を確認するため、メモに書いてあった村長さんの家に向かった。
【ツバキ村_村長の家】
「あの、すみません。“妖精の尻尾”の者です。」
扉が開き、痩せ型の男性が出てきた。顔色が酷く、今にも倒れそうな印象を持った。
「…。すまないが、あんたが“妖精の尻尾”である証拠を見せてくれ。」
「えっ。あ、は、はい。」
私は袖を捲り、左腕に着いている紺色の“妖精の尻尾”のマークを見せた。
「確かに。“妖精の尻尾”だ。あんたが、☆・★か。」
「はい。“妖精の尻尾”の☆・★です。クエストの確認に来ました。」
「そうか。入ってくれ。」
「はい。失礼します。」
「クエストの確認だったな。」
「はい。遺跡の調査と遺跡の魔物退治だと伺ったのですが、何かあったのですか?村に人が少ないような気がするのですが…。」
村長さんは顔を下に向け、少しの間、黙っていた。そして話す決心がついたのか、顔を上げ話し始めた。