第1章 【序章】第1話 クエスト
いつも通りの朝だった。
いつもと同じ道を通り、ギルドへ向かう。
いつも通りクエストを確認して、仕事を探す。
ただいつもと違うのは、その“クエスト”が自分を指名していたこと。
【妖精の尻尾】
「あら、おはよう。☆。今日も早いね。」
「おはようございます。メルさん。」
いつもと同じ時間帯にギルドに着いた。周りを見渡すと、いつもより静かだと思った。
「メルさん、マカロフ達は?」
「あそこよ。昨日、飲み過ぎたみたいで、潰れているわ。」
メルさんが指した場所を見ると、マカロフ達が机に俯せになっていた。マカロフ達の所に近づき、
「クエストに行くんじゃなかったの?」
「うぅっ、なんだ☆か。いやぁ、昨日は飲み過ぎちまったみたいでな、少し休んでから行くことにしたんだ。」
嫌みのつもりで言ったが、素直に返されてしまった。
「…。ハァ。ダリアさんに怒られても知らないからね。」
「まぁ、そう言うな。お前さんは、どうしたんだ?この時間は、クエストを確認してる最中だろ。」
マカロフは頭を擦りながら、私に問うてきた。
「それは、」
問いに答えようとしたが、メルさんに遮られた。
「あぁ、☆。あんた宛に指名のクエストが入っていたよ。」
「え?私宛に?」
一般的にクエストは、魔導師を指名できない。ギルドが一般人からクエストを受けて、ギルドの魔導師に展開し、魔導師が自分の能力に合わせてクエストを選ぶ。
「珍しいな。魔導師指名のクエストとは。…。この間の変な奴からじゃないのか?」
「大丈夫よ。マスターと一緒に調べたから。それに…。”アイツ“はウチではブラックリストに入ってるからね。ウチに依頼することは出来ないよ。」
「…。それもそうか…。」
メルさんの言葉に、少し暗い気持ちが過ぎった。
「☆、どうする?A級クエストだけど、一人でやってみるかい?」
メルさんの言葉にハッと気付き、思案した。
「…。はい。受けます。私もS級魔導師です。A級クエスト位、一人で出来ないと”妖精の尻尾“の名が廃ります。」
そうだ。私もS級魔導師。巷では私のことを“魔法女神”と呼んでくれてるが(少し恥ずかしいが)、その名に恥ずかしくない仕事をしないといけない。
「おい、大丈夫か?」
「大丈夫だよ。マカロフ。マスターも調べてくれたみたいだし、これ位、一人でこなせなくちゃ。」
私は渋っているマカロフに、息巻いて言ってのけた。