第1章 【序章】第1話 クエスト
「その遺跡を見つけたのが、二ヶ月程前だ。村の若い衆が見つけた。その時は何も無かったが、宝があるかもしれないと、一人の若い奴が遺跡に入っていった。だか、それから戻ってこない。」
村長さんは表情を変えず、淡々と話していた。
「村の男達総出で遺跡周辺を探したが、見つからなかった。入っていった奴の友人が、遺跡に入り探しに行ったが、そいつも戻ってこなかった。その時からだ。村の周辺に不気味な影が見え始めた。きっと、あの遺跡の呪いの類に違いない。」
村長さんは、また俯き黙ってしまった。きっと諦観しているのだと、私は感じた。
「すまないが、あんたには遺跡の調査と、遺跡に魔物がいたら、それを退治してほしい。これが今回のクエストの詳細だ。」
「分かりました。あの…。」
「なんだ?」
「戻ってこなかった方々のご家族に、話を伺いたいのですが…。」
「…。すまないが、それは止めてくれ。村人もあの遺跡のせいでまいっている。」
村長さんは、悲痛そうな顔をし答えた。
「そう、ですか。すみません。あの、あと一つだけ伺っても良いですか?」
「なんだ?」
「どうして、私を指名してくださったのですか?」
「…。それは…。あんたが有名な魔導師だからだ。それに、今、村には金が無くて、あんた一人にしか依頼を頼むしか無かったからだ。」
「そ、そうですか…。分かりました。その遺跡に行ってみます。お話、ありがとうごさいます。」
早口で理由を言った村長さんに圧倒されたが、悲痛な思いを抱いている村長さんや村人さん達を思うと、早く解決しなければいけないと気持ちが焦り、私は遺跡に向かった。
「…。すまない…。」
そんな言葉を小声で言った村長さんに気づかずに…。
数分後、☆が去った後の村長の家で、この様な会話があった。
「よかったよ。ちゃーんと、言う通りにしてくれて。これで、やっと、僕の計画が進むよ。」
ニコニコと笑った全身黒尽くめの男が言った。
「言う通りに、あの子をあの森に向かわした!娘を、娘を返してくれ!」
村長は、先程の静かな雰囲気と打って変わって、黒尽くめの男に言い寄った。
「アハハッ。大丈夫、大丈夫。ちゃーんと、返すよ。僕の計画が終わったらね。」
男はニコニコと笑っているのに、目は全く笑っていなかった。
「そ、そんな…。約束と違うじゃ無いか!」
村長は男に詰め寄り、焦ったように言った。