第5章 藻裾の先行き
着ぶくれした蛇が見るからに胡乱な半笑いで香燐と藻裾を見比べている。
「あ。半分くらい女の人だ。冬眠中じゃなかったんス?」
藻裾の朗らな発言に水月と香燐が口を押さえてそれぞれ斜め下を向いた。肩が震えている。
「誰が半分で変温動物か!おかえりなさいくらい言えないの?行儀がなってないわね」
着ぶくれた腕で大儀そうに腕組みした大蛇丸を藻裾は遠慮なく笑い飛ばした。
「起きて来て大丈夫なんスか?春はまだですよ?厚着もし過ぎだしさ。あはは、高いとこから尻に蹴り入れて転がしたい欲がくすぐられっちまうなー」
「状況指定の細かい欲ねぇ」
「アタシの欲は数が多くて細分化してるからね。因みに蛇を見れば蝶結びか固結びか海軍結びか、マジ迷う」
「……鰻だったら?」
「蒸すか焼くか蒲焼きか白焼きか背開きか腹開きか、これも難しい。マジ迷う」
「結びたいのは蛇だけなのね?」
「蚯蚓もそうスかね?真田虫くれぇ長くなると、そいつで何を縛るかマジ迷う」
「……真田虫…?で、縛る……?」
「そう。真田虫で縛る」
「聞かなきゃ良かったわ」
「いや、大丈夫、真田虫のことなんざアンタ聞いてねぇデスよ?アタシが好き好んで話しただけで」
鼻の頭を掻いて、藻裾は改めて大蛇丸をじっと見た。
「お久し振りスね。冬の入りっぱなからこっち見かけねぇんで、ホントに冬眠してンのかと思いましたよ。起きてたんスねぇ」
「冬眠なんかしないわよ。用があって出てただけ」
さらっと答えた大蛇丸に、水月がムッとする。
「出掛けんなら出掛けるで暖房とか食料とか、何か準備出来なかった?お陰でこっちは散々だよ」
「それくらい自分達で何とか出来るでしょ?サスケくんだっているんだし?」
「あのさ。あの暇さえあればムッツリしてるサスケに何を任せようっての?四六時中憎しみが足りないっつってお兄ちゃんのことばっか考えてンだよ、あいつ。衣食住なんか全然どうでもいいんだからね?筋肉増強の為にプロテイン呑んでるボディビルダーみたいにイタチイタチってもうイタチ補充ばっか、そんなヤツにあったかい部屋でヨーグルトとかゼリーとか食いたいなんて言えないだろ!?」
「あったかい部屋でヨーグルトとゼリーが食べたいの?」
「はい」
「後でカブトに買いに行かせるわよ」
「お帰りなさいませ大蛇丸様」
「……だせぇ」
「最低」