第1章 薬事場の三人
「それは残念な事だな。良い名を貰ったじゃないか、餅」
「ははは。あなたの名前にも祝福あれ。日向のネジ。日当たり良すぎると劣化が早くてすぐ弛みそうだから気を付けた方がいいですよ?」
「日向を馬鹿にするなぁあ!!!」
「誰が日向を馬鹿にしました?私はあなたを腐しただけです」
「日向は木の葉において最強!」
「…スイッチ変えたらどうです。戦闘中にスイッチ入っちゃったら困るでしょう?自分の苗字がスイッチじゃ取扱い注意が止まりませんよ」
「最強のヒーローは戦闘中悪役にタイムを貰える事になっているのだ、物知らずめ。プリキュア然りゴットマーズ然り」
「そういうモノを観てる訳ですね、あなたは。日向の屋敷で。熱心に。独りで」
「…何故独りと決め付ける」
「いやだって独りでしょう?」
「…どうしてわかった」
「?ネジだから?」
「煩い。黙れ、餅」
「喧しいのはそっちでしょう、義春」
「俺はネジ式じゃない。ただのネジだ」
「なら大人しく何か留めてなさい。ネジらしくグルグルっと」
「腹立つなこの野郎」
「ネジはそういうモノでしょう」
「白眼を食らいたいのか」
「自覚ないんですか?鏡を見なさい。わざわざ食らわさなくてもあなたは白目剥きっ放しですよ。」
「ヒナタ様を馬鹿にするなぁぁあ!!!」
「…いや、私は一貫してあなたを腐してるだけで、日向が凄いのは知っていますし、ヒナタさんに至っては大層可愛らしい方だと思ってますよ。あなたと違って」
「…まぁな。わかってるならいい」
「あなたが白目剥きっ放しの日向のネジって事をですか?大丈夫、そんなの砂でお会いした時にひと目でわかりましたし、以来わかりっ放しですからね。安心して下さい」
「何故だ」
「何です」
「凄く疲れて来た」
「寝不足なんじゃないですか?プリキュアとゴットマーズの観過ぎで」
「お前を黙らせるスイッチは何処だ。切ってやる」
「そんなモノ…」
言いかけて牡蠣殻は口を噤んだ。暫し考え込み、何故か赤面する。
「…私のスイッチは特定の人しか押せません」
「そいつを紹介しろ」
咳払いしながら言った牡蠣殻に、ネジが真顔で返した。牡蠣殻は首を捻って口籠もる。
「紹介…していい人かどうか…」
「?どういうヤツなんだ」
「どういうって…そもそも人と言い切ってしまっていいものか…」