第5章 藻裾の先行き
「モスラ?それもしかして私のことかしら?あらー、スイミーってば、尾っぽ掴んで頭から丸呑みしちゃうぞ、うん、コラ?アタシは円谷プロ派じゃない。どっちかったらバンダイ派」
「バンダイ特撮系じゃないじゃん」
「ヒーロー縛りの話だよ。察し悪いぞ、グ」
「グじゃないって。ホントにグとか呼ぶか、フツー。反って呼び辛くない?」
「うん?一文字呼びは経験あるから平気」
「…誰か既に餌食になってんだな。そいつに同情するよ」
「余計な世話だって爆破されるぞ?」
「爆破?…どういうヤツなんだよ、そいつは」
「さあ?」
「兎に角"グ"じゃボクの名前の欠片も残ってないだろ。訳分かんないぞ」
「いんだよ、どうせモブのことなんだから」
「とことん勝手なヤツだな。誰がモブだって?」
「この場合アタシじゃなきゃオメェのことじゃねぇの?」
「ボクはモブじゃないからな。モブはそっちだろ、汐田」
「そうだな。アタシはモスラじゃなくて汐田藻裾だな。分かってんじゃん、スイミー」
「水月!鬼灯水月だよ!わかってんだろ!?」
「いや、もう正直全然ホントに忘れてた。もう心の中でもスイミーって呼んでたし」
「……何でそんなコトになっちゃった?おかしくない?水月って覚えた方が早くない?」
「自己紹介のとき水月のスイまで聞いて飽きちゃったんだよ。だからスイミー」
「飽きちゃったって何だよ!」
「何って…もう十分でイヤになっちゃったってことじゃねぇの?飽きるって」
「…ちゃんと答えるなよ。ヤなヤツだな」
「なら聞くなよ。メンドくせぇヤツだな」
「じゃ、君は皆の名前を覚えてないわけ?よくそれでやってけたねー?全員変な呼び方してたの?カリントウとか重箱とか酒カスとか?」
「?何だそりゃ?果燐と重吾とサスケのことか?…センスねぇですねぇ…。可哀想なスイミー」
「待て待て待て待て!何でボクだけ!?」
「最後だったから?スイまでは聞いてたんだよ、ほんとに」
「スイまで聞いてたならゲツまで聞こうよ!?何なのそれ!?マジ訳分かんないぞ!?」
「オメェに分かって貰わなくても自分が分かってりゃいんだもん。だからスイミー」
「だから!スイミーじゃない!ちゃんと覚え直せよ!?」
「シュールストレミング?」
「違うだろ!?首飛ばすぞモスラ!」
「首なんか飛ばせんのか?スゲーな」