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連れ立って歩く 其の五 木の葉編 ー干柿鬼鮫ー

第5章 藻裾の先行き



行く手に細く白い煙が上がっている。出所は、雪景色の中たったひとつ佇む廃墟のような建物。

「意外に貧乏してんだなぁ。それともケチなだけか?ちゃんと経費で落ちんだろ、光熱費くらい。この寒いのに、まあ寒々しい」

目指す先はその廃墟。雪と風に凍えた体が温められるのか甚だ心許ないアジトの様子に、背の低い人影が毒づく。

「文句あんならどっか行けッての、ホント何回言わせんだ、この女は」

傍らで雪を漕ぐように歩いていたもうひとつの人影がイライラと言い返す。

「アタシが何処に行こうがアタシの勝手デスよ。ほっとけっての、水溜り。飲み干すぞ」

「水溜まりじゃないってんだよ!アンタ俺の名前ちゃんと覚えてンの?考えてみたら一回も名前呼ばれた覚えがないんだけど!?」

「覚えてますよ、うるさいな。………スイミーだっけ?」

「ス…、スイミー!?スイミー!?何だ!?スイミーってのは!そんな名前のヤツがいるかよ、バカ!ボクは小魚じゃないぞ!?どういう間違え方してんだ、器用だな!スイミーじゃない、水月だ、すいげつ!」

「すいげつ?」

「水月!」

「スイミーでいいだろ?」

「どんだけどうでもいいんだよ!どんだけ適当に間違えてんだ、バカにしやがって!薄々気付いてたけどやっぱ俺の名前も覚えてないよ、こいつ!」

「こいつ呼ばわりなんて行儀悪ィですよ。あとやかましい。黙れ、アンチョビ」

「アンチョビ!?……あれ?スイミーって鰯だっけ?赤い鰯なんかいるか?」

「知らねえデスよ、そんなん。赤い鰯に物申したきゃレオ・レオニに言いに行けよ、面倒くせぇ」

「金魚かと思ってたんだけどな。赤いからさ」

「じゃ鮋も金目も金魚か?猿のケツも兎の目も金魚かよ?バッカじゃねぇの、スイミー」

「…誰が猿や兎の話なんかしたよ。お前重吾より話し辛いぞ。反省しろ」

「反省しろとかアンチョビに言われたくねぇや」

「アンチョビじゃないって!」

「あん?じゃオイルサーディンか?それとも思いきってシュールストレミングにしとくか?」

「シュールストレミングはニシンだろ」

「畑の肥料か…。じゃ、お前は水溜りならぬ肥溜めだな」

「…………君最低だな」

「君にそう言われても痛くも痒くもないよ、スイミー改めてシュールストレミン…呼び辛ぇな。グでいいか?」

「いいわけあるか!勝手なヤツだな、このモスラ!」

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