第4章 牡蠣殻磯辺
頭を掻いて笑ったカカシにシカマルは溜め息を吐いた。
「こんなおっさんに褒められて喜んでどうすんです…」
「えー?褒められたら嬉しいよ?誰が相手だってさ」
「素直で尚良し。いい男だなえ」
伊草がにこにこして言う。
「浮輪殿に会うたと言われるが、牡蠣殻の具合はわかるかの?気を失ったかと思うたら涎を垂らして連れて行かれてしもうたんじゃが、目は覚ましたろうか」
「会ってはないけど一回目を覚ましてまた寝直したって聞いたな。…彼女とお知り合い?」
欠伸をしながらカカシは眠たげに答えた。伊草の目が細くなる。
「姪御みたようなものかいな。牡蠣殻には恩があるでの。あの通り本調子でないから心配なのよ」
「ふぅん。姪御さんね。じゃ心配だ」
「そちらさんは牡蠣殻とは既知の間柄かえ、もし?」
「話に聞いたことはあるけど、面識はないなぁ」
「ほう。そら牡蠣殻もなかなかのものだなえ。人の口端にのるほど名が売れておるのかえ、あれは?」
「国境の山賊殺しとかビンゴブッカーとか大蛇丸と消えたとか、まぁ磯と同盟を結んでるうちからすると気になる話題に事欠かない人ではありますね」
暁と絡みもあるらしいし?
腰の隠しに手を突っ込んで、カカシは伊草の笑顔を見返した。
「名が売れてるかどうかは知らないけど、あまりいい評判は聞かないかな」
「ほぉん…」
カカシから目を逸らし、伊草は顎髭をがしがしと撫でて力の抜けるような声を出した。シカマルを見、首を傾げ、腕を組む。
「どうも歓迎されとらんようだの」
「だからって追い出しゃしませんよ。五代目が保護しようってんだから仕方ない」
しかめ面で口を開いたシカマルを遮って、カカシが答えた。
「保護?何で…」
言い掛けたシカマルを再度カカシが遮る。
「五代目の呼び出し?」
「ええ、まあ…」
煮え切らない様子のシカマルにカカシはニコッと笑って見せた。
「じゃ、詳しいことは直接聞いたら。その方が又聞きするよりいんじゃない?」
「はあ…」
だから何でそんな話を五代目から聞かされなければならないのだ。
猛烈に面倒臭い。帰ってズル休みして日がな一日棋譜並べしていたい。
「ま、頑張ってよ。俺は帰って寝る。いやー、段々徹夜がキツくなってきた。俺も年だね」
「年長者の前でそういうことを言うてはいかんえ?」