第4章 牡蠣殻磯辺
「そうなんだ。お前と違って寂しい身の上なんだよ」
「…いや、そういう言い方もそれはそれで角が立つね。言っとくけど俺だって別に…」
「寂しい身の上でない事もないのか。成る程。未だガイとつるんでいるくらいだものな。とすると、相変わらずリア充はアスマだけか。…気の毒な事だな…」
「…何それ。アンタに同情される程寂しかありませんよ、俺は」
「ガイは愉快な男だからな」
「いやいやいや、誰がガイで満たされてるって言った?変な方向に誘導しないで下さいよ。大体今してんのはそういう話じゃないでしょ?」
「そういう話を始めたのはお前じゃないか。私にしてもあまり胸の張れた話ではないが、それでもお互い寂しい同士、そう邪険にするな」
ー脱力ー。
カカシは額を掌で覆って俯いた。
僅かに熱っぽい。寝ていないせいだろう。けれどだから何という事はない。調整するだけだ。次に休める時まで。
「…あー…、兎に角、波平さん?ちょっと話を整理しましょうか」
「それはいい考えだ。どんどん整理してくれ」
「何を他人事みたように…もしかしてアナタ、俺を怒らせたいワケ?」
「まさか。誰にも怒られたくなぞないよ、私は」
「ならもうちょっと真面目に…」
「私はいつだって大真面目だ」
「怒るよ?」
「怒られたくないと言ったじゃないか。わからないヤツだな」
「……」
熱が上がった気がする。この男といると体調調整など金輪際出来る気がしない。
「波平さん」
「何だ?」
改めて声をかけたらば、波平の腕の中のちっちゃいのも一緒になってこっちを見た。小さいのにマジマジ見られると落ち着かない。自分同様さして子供好きでもなさそうな独り身の波平が、よく抱いていられるものだと感心する。そんな小さくて頼りなくちゃ壊しそうで怖いじゃないか。