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連れ立って歩く 其の五 木の葉編 ー干柿鬼鮫ー

第4章 牡蠣殻磯辺



頭の血管が千切れそうだ。もう駄目だ。
いよいよ天命が尽きるかと思われたとき、ガチャと音がして室の扉が開いた。

…おお…出口があるなら地獄じゃないな…。
よ、良かった…。…良かった…。

安堵のあまり鼻血でも出るんじゃないかという心地になったらば、やけに綺麗な女の人がサバサバと室に入って来た。丸みを帯びた嫋やかな体にとしんなりした髪、年の頃が読めない不可思議な雰囲気の美人がじろりとマイト・ガイを一瞥し、腕を組む。

「何をしているんだ、ガイ。興奮させるな。体に障るだろう」

綺麗なだけに剣のある顔が迫力だ。物言いと物腰でマイト・ガイの上役と知れる。それも結構な上役。

「横になっていろ」

フと額に手を当てられた。柔らかで良い匂いのする手。それにやんわり押されて横たわる。
白い掌は額から去らない。押さえられた額の感覚に懐かしさが湧いた。眠りを誘う懐かしさだ。

「…初めて会うな」

寝台に横座りした女が穏やかに言う。

「やっと会えたな。牡蠣殻」

この人も私を知っている。

不意に自分が何処に居るのか、思い出した。

そうだ、ここは木の葉だ。
ならばこの人は…

柔らかな掌の下から掬い見た綺麗な顔が笑み溢れた。

「私は五代目火影、千手綱手。名前くらいは聞き知っているだろう?いや、知らぬかな。何せ世間知らずで得手勝手な磯の功者の事だものな」

「…五代目…」

掠れ声を洩らした口元に、綱手のもう片手の人差し指が添えられる。

「今は休め。無闇に目を覚ましたり不安になる事はない。…お前を守ってやる。安心しろ」

…安心…。

て、何だ?そんなに不安でキトキトしながら生きて来たか?
いや、別にそんな事はない。大体安心したいとか何とか、そういう考え方をした事がない。

「難しい顔をするんじゃない。眉間の皺が凄いぞ、お前」

プッと噴き出した綱手の手が優しく額を撫でる。

「兎に角寝ろ。体を休めるのが今のお前の仕事だ」

また懐かしさが湧いた。眠くなる。
寝てしまっていいのだろうか。波平様はどうしている?一平様は?

瞼が視界を閉ざした。疲れている。
今はこの綺麗な五代目の言葉に甘えて休もう。

後の事は、後の事だ。









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