第3章 木の葉に馬鹿を突っ込めば
「…それこそ何の話だよネジ。勝手な方向に話を膨らませてんじゃねえ」
「どんな趣味でも息子は息子…」
「親父は黙ってろ」
「どんなバカでも息子は息子…」
「…お袋も黙ってくんねえかな?」
「男が好きでも男は男…」
「…アンタと一緒にしねぇでくれますかね、伊草さん」
「あら?一緒のコトなどあるかいな。わちは女子も好きじゃもの」
「シカマルくん、大丈夫だよ?どんな趣味でもシカマルくんはシカマルくんだから…」
「ナルトがそんな趣味だっつっても同じ事言えんのか、ヒナタ?」
「絶対ヤだ」
「だろう?」
溜め息を吐いて、シカマルはフと辺りを見回した。
「…波平さんはどうした?」
「浮輪さんなら五代目ンとこに行ったぞ」
シカクが呆れ顔で答える。
「気付いてなかったのか?たく、馬鹿話に夢中になりやがって」
「その馬鹿話にのっかって来た癖に何抜かしやがる、クソ親父」
「やかましい。俺がクソならオメェもクソだぞ。出自は誤魔化せないっつってな…」
「お袋、親父がお袋ンことクソだってよ」
「ば…ッ、なッ、何を言い出すんだオメェは!俺を殺す気か!?」
「クソがクソと結婚してクソが生まれたんだろ?普通に。出自は誤魔化せねえっつって…あだだだだだ…ッ!!!止めろ、痛ぇだろ、お袋!」
「親に向かってクソクソ何だ、この親不孝者!」
「ちが…ッ、俺は親父に…ぃいだだだッ」
「だははははは、ザマねぇな、シカマ…ぃぢッ」
「アンタも子供相手に聞き苦しい言い合いしてんじゃないよ、情けない!」
「…すいません…」
「ヨシノ殿は良き山の神よのぅ。山の神が強い家は安泰だもの」
屈託なく笑った伊草にヨシノがにっこり笑い返す。
「これでも苦労してんですよ、息子を男好き呼ばわりする爺だか婆だかハッキリしない客にも愛想良くしなきゃならないしさ?」
「…すいません…」
「分かればよろしい!愚図愚図してないでアンタらも五代目ンとこに顔出しな!どうせ呼び出されんだろうからサッサと動く!」
ヨシノに檄を飛ばされて、シカマルは湯呑みのお茶を呑み干した。
「じゃ、ネジ、昼に客舎の食堂でな」
囲炉裏端に湯呑みを伏せて、ネジに声をかける。
「飯奢るからよ」
「奢りはいらな…」
言いかけたネジの肩を叩いてシカマルは縁側から表に出た。
「待ってるからな」