第3章 木の葉に馬鹿を突っ込めば
「何だよソレ。どういう質だよ」
「だから、変わった質じゃと言うとるのよ、もし」
品をつくって言う伊草にシカマルがウと退く。
「…そんな質だったか…?」
ネジが首を傾げた。シカクとヨシノと何やら話す波平に抱えられた牡蠣殻に目を向ける。
「…いや…」
言いかけてシカマルと伊草、ヒナタにじっと見られている事に気付いて口を噤む。
「帰ろう」
「ネジ」
改めてヒナタを促して踵を返したネジの背中にシカマルが声をかけた。
ネジが振り向く。
「今日の予定は」
「何故そんな事を聞く」
煩わし気なネジへシカマルは笑顔を向けた。
「忙しいんならいいんだ」
「だから何だ?」
「久し振りに将棋でもやらねぇかと思ってよ。たまにゃいつも指さねぇ相手とやりてぇんだ」
「将棋?」
「十班は任務を終えたばかりで手漉きだろ?」
「…よく知ってるな」
「リーさんが関われば皆がよく知らねぇ事なんかほぼねぇぞ。賑やかで目立つからな、あの人」
「任務がないときはずっとトレーニングしてるものね」
ヒナタが頷く。確かに休暇のリーはよく目立つ。鍛錬しながらあちこちウロつくから。
「…将棋ならわちも指せるえ?混ぜてくれんかの、もし」
伊草が口を挟んで来た。シカマルは苦笑いして首を振る。
「アンタは今日忙しくなると思いますがね」
「そりゃお前さんも違いないんじゃないかいの」
「まぁアンタや波平さん程じゃないですよ」
耳の後ろを掻いてシカマルは斜め下に顔を下げ、伊草の視線を避けた。
「実際薬事場で何をやってるかったら、文字通り相談にのってるだけスからね。増して波平さんが顔を見せたんなら、俺よかアスマでしょ」
「三代目の一粒種かえ」
打てば響く伊草の反応にシカマルは俯き加減の格好で目を眇める。
「あぁ、まあ、俺の班の指導教忍ですよ」
「良い師を持ったの」
「さあ。良いのか悪いのか。人は悪かねえとは思いますけどね」
「三代目は傑物だったと聞くでな。その息子となればさぞ…」
「…さぞ?」
「良い男であろうなえ、もし?」
「…何の話だったっけ?」
「三代目の息子殿が良き男振りであろうなという話…」
「…何の話をしているんだ、お前らは」
ネジが気味悪そうにヒナタを背に庇う。
「他人の嗜好に口出しする気はないが、今更知りたくなかったな、シカマル…」