第3章 木の葉に馬鹿を突っ込めば
「何を失礼な!それを言うならヒナタ様も白眼…」
「そっちは白眼だがこっちはチャームポイントだ」
「…納得いかんが納得した。いいだろう。痛み分けという事にしてやる」
「私は痛くも痒くもありませんよ?」
「…腹の立つ奴だな」
「うーん、何処に行ってもそう言われますねえ…。一体何なんでしょう。心外だなあ」
「…心外…?」
「心外です」
「…あのなぁ。浮輪さんにしろ汐田にしろ、アンタに限ったこっちゃなく磯のモンは人を怒らせんのが上手過ぎんだよ…。話を煙に巻くなって話」
シカマルが明らかにうんざりと言った。
「いやぁ。そんな上手過ぎだなんて…。あはは。照れますねえ。…で、何が上手いんです?」
「そういうところだ!人の話をちゃんと聞け!十のうち八は素通りしてんだろ!?」
「…何処かで誰かに言われた気がするフレーズだなあ…」
「何処かで誰かじゃなくてよ。何処行っても誰からも言われてんだって…」
言いかけたシカクがまたヨシノに睨まれて咳払いする。
「まあ、その、そういうのが磯だ。仕方ねぇ。慇懃無礼な里だって聞くぞ」
「薬事場の皆はそんなじゃねぇよ」
ムッとしたシカマルにシカクが顎髭を撫でて苦笑した。
「あそこにいんのは磯者でも磯師の連中がほとんどだろ?磯師は忍耐強くて手先が器用な職人の系だ。手に負えねぇのは気儘で口減らずの野師とか気が強くて商売っ気のある潜師とか気位が高くて頑固な薬師とかだな」
「それは磯師以外の磯者全部ですね」
興味深そうに牡蠣殻が口を挟む。シカクは朗らかに笑った。
「はは、そうか。で、アンタはどの師系なんだ?」
「野師です」
「…成る程なぁ…」
「何が成る程なんですか?」
真顔で聞かれてシカクはまた苦笑いした。
「で?汐田はやっぱり野師か?」
「汐田さんは潜師ですよ。因みに波平様は野師の系です」
「…ああ…。そうか。成る程な。…成る程…。こりゃシカマルも難儀だな…」
「…あの…おじさん。ちょっと失礼じゃ…」
しみじみするシカクを見かねてヒナタが口を開いた。
「ホントだよ。お客さんを腐したりして、失礼じゃないか」
ヨシノも呆れてヒナタの言葉に頷く。
「客じゃねえだろ、呼んでもねんだか…アダ…ッ」
言いかけたシカマルの頭にヨシノの拳骨が落ちた。