第2章 砂
「杏可也」
丈高い男が竜胆色の上着を引いて呟く。
「それに長老連」
「…荒浜。テマリはどうした。一緒に居ろと言っただろう」
我愛羅がスッと目を細めて男を見返った。
「知らん」
隠居部屋を興味深げに眺め渡しながら、荒浜海士仁がさらりと答える。
「出ていった」
「出ていった?何故?」
我愛羅の問いに煩わし気に首を撫でる。
「怒った」
「怒らせたのか」
「是」
「何を言った」
「知らん」
「何を言った?」
「知らん」
「何を…」
「止ーめ止め止め、止めろ二人とも。切りねぇぞ」
カンクロウが我愛羅と海士仁の間に割って入った。
「聞いてる方が気が遠くなる。止しなさいって」
「何を…」
「だーかーらー、我愛羅!止めろっての!」
「知ら…」
「アーンーターも黙れ!ユラユラ体言止めで話しやがって、カオナシか。ジブリは間に合ってっぞ。俺はピクサー派だ」
「…ナイトメアビフォア?」
「お、いいとこ突いて来やがるな!けどジャックはディズニーピクチャーズじゃん?ピクサーならバグズ・ライフのスリムかレミーのリングイニじゃん?アンタは。ひょろひょろ系な」
「リングイニは好かん」
「あ、そう?いいじゃん、リングイニ。俺は好きだけどな」
「…ランドールがいい…」
「…アンタ変わってんな…いや、俺もランドール嫌いじゃねえけれども」
「ドリーでもいい」
「ファインディング・ニモ!?あのドリー!?アンタの自己評価どうなってんだ。面白いな、おい」
「…俺はポテトヘッドかウォーターヌースで頼む」
「オメーにゃ聞いてねぇぞ、我愛羅。いや、面白いけれども。似たモン同士じゃん、オメーら二人?」
「そうでもない」
「どうでもいい」
「…言っとくけどな。こっちこそそんなのどうでもいんだぞ、ホントは。敢えて気を遣って取り持とうとしてんだ。察しろ。そんで汲め。で?杏可也おばさんと年寄り連中が何だってんだ?早く話してテマリに謝りに行けじゃん。後でこっちが当たられたらたまんねぇ」
「そうじゃ。カンクロウはそういう星廻…」
「俺の星廻りの話はもういいから。この際大事な話題に一切関係ないから」
「何を言う。皆のサンドバッグは大事じゃぞ」
「噛ませ犬は特に可愛がってやらにゃやさぐれちゃうからのう」
「…黙ってろよ…。それこそやさぐれんぞ」