第2章 砂
「風評被害!?」
「どんだけビックリしてんだチヨバア。入れ歯が飛ぶぞ。そんな飛び道具怖ぇから止めろ。何で俺が帰宅部なんだよ。ちゃんと忙しく働いてから家に帰って何が悪ィのよ?」
「だから帰宅部」
「なら帰ってからも働いてんのか、アンタらは!違うだろ!?たく、それよか干柿鬼鮫だよ!何を貰ったんだ?俺も知りてえじゃん。大体何だって俺を中継してんだ。いいように使いやがって…」
「如何な伝書も器用に地下まで入っちゃ来れんじゃろ」
「ああ、音に居たときの牡蠣殻の手紙も俺経由だったもんな。牡蠣殻が出したモンとも知らずにせっせと郵便屋さんしてた俺って、ホント人が好いよな!?」
「ありゃ牡蠣殻が言いだしたんじゃぞ。言ったらそれだけお前を信用しとるってコトじゃん?」
「だったら隠さなくていいじゃん。信用してんのに隠し事?ねぇよ」
「…信用しとっても任せられないっちゅうか…」
「…信用しとってもいまいち当てにしきれんっちゅうか…」
「そぉゆうのを信用してねぇって言うんじゃん?」
「ぎゃはは」
「まあ、所謂消去法で勝ち得た信用じゃわ」
「我愛羅やテマリじゃすぐバレちゃうしな」
「他に知ってるヤツもおらんしなぁ。しょうがない…」
「それもう全然信用じゃねえじゃん。言わなくていいよそこまで。何で俺を凹ましにかかってんだよ。黙ってりゃいいじゃん。放っときゃいいじゃん」
「だから黙ってたんじゃん。聞いてきたのはそっちじゃんじゃ」
「自業自得じゃんじゃ」
「じゃんじゃんじゃんじゃんうるせぇんだよ!!!」
「それお前の事じゃ、カンクロウ」
「天唾じゃな」
「……いいお兄さんですね」
隠居とカンクロウのやりとりを黙って聞いていた波平が我愛羅と目を合わせる。
我愛羅は波平を見返した目をカンクロウに向けて頷いた。
「こうなるまで俺たち兄弟にも色々あったが、今はもうどうでもいい。カンクロウはいい兄だ」
「身近にあんないじり勝手のいい人がいると、随分気が軽くなるでしょう」
「…そういう意味か…」
「カンクロウくんは機を見るに敏だし頭の回転も早い。周りを見る目が広く判断力もある。情に厚過ぎる嫌いのある点が難と言えば難ですが、一帯に彼は平衡感覚に優れた優材ですよ。良い兄弟に恵まれてあなたが羨ましいです」
「あなたにも兄弟があるだろう。彼女に不満があるのか」