第2章 砂
「だからってわざわざ言う程のコトでもありゃせん」
「なら言っちまえばいいじゃん。隠さなきゃならねえことなんざしねえに限るんじゃねえの?」
真顔で言い添えたチヨバアをカンクロウが諌めて我愛羅と波平を見た。
「俺ンとこに白い伝書鳩が来た」
「…雪渡りかな」
波平が独り言した。
「私が牡蠣殻に譲った子飼いの伝書鳩ですよ。磯の伝書は磯らしく鼻が利く。干柿さんのところに居るのか、あれは」
「じゃねえの?」
心なししょげた様子の波平に、カンクロウが頭を掻いた。波平へチラと気の毒げな目を走らせ、互いの目が合う前に明後日の方を向く。
「……や、まあ、鳩にまで振られたとか別にそんな思い詰めんなよ。な?」
「鳩に"まで"?」
「いや、鳩"にも"?」
「…ひどい…」
「メンドくせーなー。いいじゃん。今までがどうだってこれからもずっとそうとは限んねえんだしさ。大体鳩と牡蠣殻が同ポジってよ、どうなのそれ。そんなんだったらやっぱ牡蠣殻も砂に居た方がいんじゃん?」
「牡蠣殻牡蠣殻しつこいですよ。君は磯辺の何なんです?アレもいい大人です。一度助けたからといって、保護者気取りをするのは止めて頂きたい」
「保護者気取りなんかしてねぇじゃん。言ったろ?俺はただ顔見知りがボロボロになるとこは出来れば見たくねえの」
「要らぬお世話ですよ」
「アンタに世話はやいてねえよ。牡蠣殻に言われんならまだしも…」
「そうですねえ。いっそ磯辺に言われれば後生がいいのでしょうが、生憎アレは今木の葉です。私で我慢して下さい」
「アンタ牡蠣殻じゃねえじゃん」
「だから我慢しなさいと言っている」
「何の我慢だよ。俺が我慢とかする必要ある?俺何か変な事言ったか?」
「君が変だなんて誰も言ってませんよ」
「当たり前だっつの。俺ァ変な事言ってねえし、そんなんいちいち言わなくてもわかりきってんじゃん」
「いや、カンクロウは結構変じゃ」
「そうじゃな。結構変じゃ」
「…役職の身の上で帰宅部だしな…。変だ」
「……ちょっと?何だよ、帰宅部って」
「俺は嘘が吐けないのだ」
「帰宅部帰宅うるせぇんな。家大好きで悪いかよ!そもそも俺が帰宅部ってな誰か言い出しっぺだ…って汐田だよ!くそムカつくな!風評被害じゃん」