第6章 年の瀬、花屋の二階で
「何言ってんですか。そんな破綻した性癖を晒されても困るんですよ」
「困りますか。それは嬉しいですね」
「ちょっと。ホントもう帰って下さいよ。暁でも海でも水族館でも、好きなとこに帰って下さい。蒲鉾屋でもフカヒレの加工工場でも何ならフィッシュアンドチップスの揚げ油の中でも構いません。兎に角帰れ今帰れすぐ帰れ」
「またツケが貯まりましたよ。何回死ぬ気でいるんです、あなたは」
「誰がそんなツケ払うか。踏み倒してやる」
「出来る訳ないですよ。相手が悪い」
「…確かに相手が悪いですねぇ…」
「しかも更に悪いことに、あなたはその相手が好きなんでしょう?」
「うわ。自分でそういうこと言う?痛いですよ、干柿さん」
「違うんですか?」
「…ああ。…まぁ違いませんね…」
「おや、顔が赤くなって来ましたね。暑ければ窓を開けますよ?ついでに外へ放り投げてあげましょうか?」
「ここ二階ですよ」
「そうですよ。だから死にはしないでしょう」
「死ななきゃいいってもんじゃないでしょうよ」
「死ぬよりはいいんじゃないですか?大体そんな簡単に死んで貰っちゃ困りますよ。詰まらない」
「なら安易に外に放り投げたりしないで下さい。そんなに甚振りたいのなら平時にはもう少し大事に扱ってみても罰は当たらないと思いますがね」
「大事にされたければそれなりの人間になって下さいよ」
「鮫にそれなりの人間になれなんて言われたかありませ…あ"ーーッ!いだーーーッ!!!」
「ツケはいっぱいでそろそろ現金払いの時間です。歯を食い縛って腹に力を入れなさい」
「いやいやいやいや脇腹つねり上げられちゃ腹に力を入れたところで何の意味も…あーーッだぁああぁぁぁーーーッ!!!」
「何事も気合いですよ、牡蠣殻さん」
「気合いで痛みが消えるなら病院は要らないし足の小指をタンスの角にぶっつけて踞る人も居ないんですよ!辛がってる相手に精神論を語るなんて最悪のいやがらせですよぅいだーーーッ!!!だあぁぁーーかーらあぁッ!いだいいだいあだだだだぁーーッ!!!止めろつねるな!言ってる端から何をする!話を、聞けよッ、コノヤロウ!!」
「体にも肉がつきましたね。些少ですがないよりはまし、これが胸や尻まで回ればもう少し女性らしい体つきになるでしょうに」
「今度はセクハラか!忙しいな!」