第6章 年の瀬、花屋の二階で
「だから、わかんねぇって。ホント好きだよな、女子はこの手の話がよ」
「好きで悪いか」
「いや、悪かねぇけど」
「なら話して下さいよ。シカマルもそういうこと話さないから、もう気になって気になって。うちのバカ、テマリさんに粗相してません?」
「うちの跳ね返りも粗相しかねねぇからなぁ。どっちもどっちで仲良くしてんだから、ほっときゃいいじゃん」
「まあまあまあまあ、そう言わず」
「あんま近寄んなって!お茶が呑み辛ぇじゃん!こぼすこぼす!」
「こぼしたらまた淹れてあげますって。大丈夫です」
「大丈夫じゃねえよ。火傷したらどうすんだよ、アンタが」
あらヤだ。優しい。
いのが意外そうな顔をして、ちょっと顔を赤らめた。
「カンクロウさん、見かけによらず、意外と優しい…」
「見かけによらず意外って何だ。思ったことそのまんま言うな。少しは呑み込み易く優しさのオブラートで包んどけ」
「オブラートって反って呑み辛くありません?喉につかえちゃう」
「そりゃ包み方が悪ィんじゃねえか。あれにゃコツがあんだよ」
「コツ?」
「薬を包んだら水に浮かべてちょっと待ってからすくって呑む。オブラートがゼリーみてぇになるからするっと呑めんだよ」
「へええ!成る程。いいこと聞いた。今度試してみよっと」
「試せ試せ。処方された薬はキチンと呑まねぇとな。苦いとか呑み辛いとか言ってちゃ駄目だぞ」
「滅多にないですけどね。薬呑むようなことなんか」
「ああ、そらいいことじゃん。元気でいるにこしたこたねぇからよ」
「あはは。ジジくさ…」
「…アンタは薬の呑み方よか物の言い方を覚えた方がいいぞ。可愛い顔してちょろちょろちょろちょろ口が滑っ…」
「やだー!可愛いなんてそんなー!…羊羮食べます?素甘もありますよ?」
「わかり易ィ…」
「何?」
「いやいや。じゃ素甘貰うかな」
「もー、遠慮しないで下さいよ!羊羮も出しちゃいますね。お煎餅いかが?どんどん食べちゃって下さい」
「…可愛いなぁ、アンタ…」
「何?」
「別に。素直なのはいいことだって話」
「はぁ」
カンクロウはお茶を啜って表を眺めた。
この少しの間にも雪はどんどん降り続けて、嵩を増して町を覆いつくしている。
テマリのヤツ、どうしてっかなぁ。