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連れ立って歩く 其の五 木の葉編 ー干柿鬼鮫ー

第6章 年の瀬、花屋の二階で



「そうですか?一緒に花を選ぶのも素敵なことと思いますがね。それよりあなたの場合、事と場合によっちゃ渡すこと自体不粋になりかねませんがそこらへん大丈夫ですか」

「何それ。どういう事と場合の話よ」

「カンクロウさんと花を贈るという行為の話ですよ」

「俺が花を贈る事自体不粋だってか!何を根拠にそういうことをいうか、この地味髷!」

「日常的に派手な髷なんてありますかね?」

「…ゼンマイザムライとか?」

「まぁ実際あったら派手に笑えますが、そういう派手のことじゃなく」

「うるせーな!揚げ足とってばっかいんじゃねえ!ほんッとにオメーはよ!」

「あは。カンクロウさんは素直でいらっしゃいます。お話していて飽きません」

「いじり甲斐があるってか?チクショウ」

視線を感じなくなった。あれはカンクロウの視線だったのだろうか。
牡蠣殻は眉根を寄せてカンクロウを見た。

「…意外に目力がおありになるんですねえ…」

「何ソレ急に」

「いや、何だか拍子抜けしました。やっぱり私は間抜けなんだなぁと」

「何言ってんだかさっぱりわかんねぇじゃん」

「わからなくてもいいですよ。独り言みたいなモンですから」

いのの花屋には行ったことがある。
綱手の腹心のシズネに連れられて一平や伊草も一緒に花を買いに行った。職務に追われる綱手を労りたいシズネに問われ、珊瑚色の篝火花を薦めた。篝火花の効用というより植物と色彩の効用だが、緊張を解して苛立ちを鎮め、尚且つ肌の若返りに良いと言うと、シズネは綱手にピッタリだと三十鉢買い求めた。
買い過ぎだ。
篝火花は今、政務室で綱手を取り囲んで彼女を癒してみたり、数に任せて苛立たせたりしている。

「本当にいのさんに何の用です。場合によっては案内をお断りしますよ」

並んで歩きながら尋ねる牡蠣殻にカンクロウがしかめ面をした。

「断るってのはどういう場合じゃん?」

「いのさんにお付き合いを強要したり、住所を把握して今後のストーキング活動の参考にしたりする場合ですかね」

「…あのな。俺はそこまでいじましくねぇ。だったらいっそ当たって砕けるから」

「やっぱり当たって砕けにいらしたんですか?」

「オメー後で覚えてろよ。この恩は高くつくからな」

「恩?」

「恩だよ。おい、ちょっと手を見せてみろじゃん」

唐突に言われて牡蠣殻はキョトンとした。
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