第1章 嫌よ嫌よも好きのうち(灰羽リエーフ)
なんで、こんな無駄に王子様みたいな事をするのだか。
理解に苦しんでいただけなのに、リエーフの中では無言が良い方に変換されたらしく…。
「照れてんのか?大丈夫だって!ちゃこが俺の事好きだって、ちゃんと分かってるから!」
告白も済んだ事により、完全に付き合う話を進められていた。
立ち上がったリエーフは、当たり前に私の手を握ったまま歩き出す。
私は、ついて行けなかった。
体も、思考も停止している。
リエーフが、キョトンとした顔で振り返って顔を近付けてくる。
「どうしたんだ?まだ顔赤いけど、具合でも悪いのか?」
熱を測るかのように額を付けられて、心臓が早くなる。
恥ずかしさもあって、勢いよく離れた。
「何勘違いしてんの?リエーフが下手過ぎるから気になってただけで、好きとかじゃない!リエーフなんか、嫌い!」
口から出たのは、可愛くない言葉。
バレーボールを嫌いと言った時より苦しくて、ここでやっと自分の気持ちに気付いた。
「…用事あるから帰る!」
顔を見たくなくて背を向けたけど、歩き出す事は出来ない。
リエーフに抱き締められていた。
「嘘つくなって言っただろ?」
耳元で聞こえる低い声。
自分の気持ちを分かった後で否定を続ける事は出来なくて。
「…好き。だけど、リエーフの事、嫌いって…言っちゃった後で、素直になれる訳…無いじゃん。」
本音を吐き出したと同時に、涙が溢れてきた。