第1章 嫌よ嫌よも好きのうち(灰羽リエーフ)
涙を拭うように、頬に手が触れる。
そこに力が加わって、顔を横に向けさせられた。
私の肩に顎を乗せた状態のリエーフが笑っている。
「ちゃこは素直だ。」
「…どこがよ。」
「嫌よ嫌よも好きの内って言うんだろ?」
「本当に嫌な場合もあるけどね。」
心の内を読まれているようで恥ずかしい。
また可愛くない事を言った唇が、リエーフの唇で塞がれた。
嬉しいより、こんな道端でされたのが恥ずかしくて顔を引く。
数センチだけ離れたけど、その距離は、すぐに無かった事になった。
2度目のキス。
これ以上は引けなくて、受け入れるように目を閉じる。
数秒だっただろうけど、物凄く長く感じた。
漸く離れたのに、顔は近いまま。
「今のは、本当に嫌なやつだったか?」
「恥ずかしいから、こんな場所じゃ嫌だった。」
吐息が掛かる程の、超至近距離で会話する。
それすらも恥ずかしくなって、口を閉じた。
「じゃ、俺とキスすんのは嫌じゃないんだな?」
挙げ足取りみたいな言い方されても、もう言い返せず。
「な、ちゃこ。俺と付き合ってくれ。」
私が何も言わないのを良い事に、どんどんリエーフが話を進めて、再びの告白。
さっき好きと言ったばかりで。
キス自体は嫌じゃないと言葉に含ませたばかりで。
断るなんて出来る訳がない。
ただ、やっぱり息が掛かるのが恥ずかしくて、何回も頷いて答えるのが精一杯だった。