第1章 嫌よ嫌よも好きのうち(灰羽リエーフ)
それ以来、見学には行かなくなった。
練習を見に行かなくなって数週間。
リエーフが、私の元を訪れる。
用件は…。
「スパイク教えてくれ…さいっ!」
この、お願い。
どうやら、私が見学に行かなくなった事で何かを察知した先輩方が、あろう事か私の経歴を暴露してくれたようだ。
「なんか敬語変だし。嫌だよ。」
当たり前のように断ったのに、リエーフはしつこい。
「じゃあ、練習見に来いって、な?」
これくらいなら良いだろ、とばかりにお誘いされても、もう嫌だ。
人の情報、勝手にバラすような先輩には会いたくない。
首を振ってノーを伝えた。
「俺のカッコいいトコ見たら、惚れ直すぞ!」
次の台詞は、思ってもみなかった言葉で。
意味が分からず、口を半開きにしてしまう。
「ちゃこ、俺の事ばっか見てたろ?俺の事、好きだろ?」
それは、ヘタクソ過ぎて心配だったからだ。
これを口に出したら、ギャーギャー騒がれそうだから言わないけど。
「俺も、好きなコに見て貰えたら頑張れるし!」
多大な勘違いをしたまま、話を続けるリエーフの口から、爆弾発言が飛び出した。
こんな勢いで出ちゃった、みたいな告白ってありますか?
しかも、ここ、教室です。
周りに注目されてます。
「…リエーフ、その話はちょっと、うん。後でしようか。人気のないトコで話そう。
そんで、今は自分の教室に、戻って。考えたい事…あるから。」
なんとか今の状況から抜け出そうと、途切れがちに言葉を返す。
「じゃ、放課後!練習終わったら、一緒に帰ろうな!」
私がどうして追い払いに掛かったのか。
理解してない様子のリエーフは、爆弾を置いて教室から出ていった。