第1章 嫌よ嫌よも好きのうち(灰羽リエーフ)
恐る恐るリエーフの顔を見上げる。
怒っているどころか、寧ろ嬉しそうに笑っていた。
「ちゃこは、本当にバレーが好きなんだな!練習の時思ったんだけどさ、ちゃこは選手やれば良いんじゃないか?」
曇りのない笑顔で、裏のない言葉。
「強打の方も威力あったし、ルールもよく知っているから、強くなれると思うぞ。」
何も知らないから出てくる純粋な言葉が突き刺さる。
「別に興味ない。バレーボールなんか、嫌い。」
口から飛び出る真っ赤な嘘。
本当は、何よりバレーが好きで好きで仕方がないのに、諦める為に言葉として出した。
「嘘つくなって!好きだから練習見に来んだろ?」
リエーフは、その純粋さで私の心を抉っていく。
否定を続けられる程、私は強くも無くて黙り込んだ。
「どうしたんだよ?俺、なんか変な事言ったか?」
リエーフは、悪くない。
知らないなら、言っても変じゃない言葉。
分かっているのに気持ちがついていかない。
「ごめん。用事あるの忘れてた。先帰るね。お疲れさまー!」
逃げるように早口で捲し立てて、その場から走り去った。