第1章 嫌よ嫌よも好きのうち(灰羽リエーフ)
私の心中を知らない部員達は、いつ見学に行っても歓迎ムードだ。
しかも、先輩方から直々に頼まれてしまうと体育会系の縦社会に慣れた私が断る事も出来ず…。
「…リエーフっ!途中で諦めない!飛び付け!」
何故か、一番のヘタクソと、ワンマンレシーブ練習をする羽目になった。
先輩方が説明もせずに私をコートに入れた辺り、どうやら私の経歴は知っているらしい。
「ちゃこの鬼!あんなの、取れる訳ないだろー?」
「拾えなくても飛び付きに行くのがワンマンだよ。レシーブ下手なんだから、もっとしっかり走れ!」
「レシーブより、スパイクの練習してーよー!」
「そんな事言ってると、夜久先輩に怒られるよ。」
ネットを挟んでの会話。
ほぼリエーフのワガママである。
勿論、聞いてやるつもりはないし…。
「熊岡、10本追加してやれ。強打でな。」
夜久先輩から、こんな指示も貰ったから、レシーブの練習を続けた。
「ちゃこも、夜久さんも鬼!俺はカッコいい事がしたいんだよ!」
その日の帰り道。
同学年という事もあって、リエーフと一緒に帰っている。
リエーフは、ずっとこんな感じで、スパイクのカッコ良さだとかと延々と語っていた。
「レシーブがカッコ悪い訳じゃないでしょ。拾う人が居なかったら、攻撃にならないんだから。」
「だったら、夜久さんが全部拾えばいいじゃんか。そんで、研磨さんが俺に上げて、俺が決めたらいいだろ?」
本当にコイツは、チーム競技を分かっていない。
「じゃあ、ボールが落ちたら全部夜久先輩の所為にするの?もし、アンタの目の前に落ちても?
チーム競技だって分かってないなら、バレーボールなんか辞めちゃえば…。」
つい、イライラして強めに言い返してしまう。
途中で気付いて言葉は止めたけど、言ってはいけない部分は口に出してしまっていた。