第4章 月を捕まえる(月島蛍)
ノートがどうしても欲しい、ついでに月島と仲良くなれるチャンスかと思うと選択肢は一つ。
「質問って何?」
質問の内容を急かすように問いを返した。
「熊岡さんさぁ、いつも授業中に僕の事見てるけど、用事があるならはっきり言いなよ。」
聞こえた言葉に体が硬直する。
これ、公開処刑だ。
多分、月島は女子からの好意に慣れてる。
もし答えて、告白とかされても本人は恥ずかしくないんだろう。
逆に答えなくても、ずっと見てる事を周りに知らせてしまえば授業中の不愉快な視線がなくなるって魂胆かな。
「…月が欲しいの。明るい太陽に霞んで見えなくなってしまっている月が見たいの。月島じゃなくて窓の外を見てたんだよ。」
黙ったままではいられなくてポエムのような返し方をしてしまった。
ちょっと脳内花畑というか、不思議ちゃんな感じを醸し出した私を不審な人を見るような視線で見下ろしてくる。
周りのクラスメイトも聞き耳を立てていたようで、一瞬の沈黙の後に笑いが起こった。
「そういえば、熊岡って中学時代から宇宙オタクってーか、宇宙飛行士になるって真面目に言ってたよなー。」
同じ中学から上がってきた人がフォローだか馬鹿にしてるんだか分からない言葉を口にした。
それで、周りは更に大笑い。
急に恥ずかしくなって机に額を付けて顔を隠した。